日本人が知らない医療大麻の「不都合な真実」:世界を読み解くニュース・サロン(4/5 ページ)
元女優の高樹沙耶容疑者が大麻取締法違反の疑いで逮捕された。容疑者が医療大麻を推進していたこともあって、医療従事者などが「医療大麻ってものはない」「(医療大麻は)必要ない」などとコメントしていたが、本当にそうなのか。世界に目を向けると、ちょっと違うようだ。
医療大麻を受け入れている理由
大麻合法化の流れにこんな理由もある。警察など取り締りを行う当局の負担が軽減されるのだ。2010年の調査によると、米国の逮捕者数のうち半数以上が大麻関連であり、かなりのコストがかかっているという。つまり、違法にしておくと州の財政にも響くのである。
医療大麻について言えば、病気の患者にさらなる選択肢を与えられると言われている。実はこれこそ、米国人の多くが医療大麻を受け入れている理由だと考えていい。
魔法のような健康効果、などとは関係なく、大麻に陶酔作用や幻覚作用などがあるのは知られている。その作用から、実際に痛みなど症状の緩和に効果があるのである。大麻に含まれるテトラヒドロカンナビノール(THC)という成分には、吐気を緩和し、食欲を推進し、痛みを緩和する効果がある。またカンナビジオール(CBD)という成分にも、痛みを緩和する作用がある。
日本でも、症状緩和と治療のために大麻を使用して逮捕されたがん患者が、公判で医療大麻の使用を認めるよう訴えていたケースがあった(2016年7月に患者は死去)。実際に米国では、吐気などを伴う抗がん剤の副作用を軽減する作用があるとみられており、抗がん剤とともに投与される制吐薬(吐き気を止める薬)の代わりに、大麻が選ばれる場合もある。
つまり、痛みなど症状の緩和という意味で、医療大麻は患者に恩恵を与えるのである。
2016年3月に米AP通信が行った世論調査では、米国民の61%が大麻の合法化に賛成している。そのほとんどが、医療大麻に限る、または個人の所有量に規制を定めるという条件付きで合法化すべきとしている。
米国では大麻に対する期待は大きい。そして今後、さらに合法化が進み、「医療大麻」が世界的にその存在感を高めることは疑いの余地がない。
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