山手線・品川新駅の魅力を高める「田町始発」電車:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(4/4 ページ)
JR東日本が建設している「品川新駅」について、広大な開発用地の使い道や駅舎のデザインなどが話題になった。ここで、もう1つ重要な話をしよう。駅にとって大切な列車の運行計画だ。
品川新駅の朝活を支援する「田町始発」
山手線の工夫はまだある。夜間に設定された品川行きと、早朝に設定された田町発だ。品川駅は車庫に隣接した大崎駅も近いし、京急の線路との間に留置線もある。だから最終便に近い時間帯の品川行きは納得できる。しかし品川発がない。田町駅については、田町終着の電車がない。しかし早朝に田町始発がある。この電車はどこから田町に来るだろうか。
実は、深夜の品川着と、早朝の田町発は対になっている。山手線の品川行きのうち、外回りの電車は回送となって大崎駅に行き、車庫に入る。しかし内回りの電車は、品川で乗客を降ろした後、品川駅の留置線に入る。翌朝、品川駅の留置線を出た列車は、また戻って品川駅に入ることなく、そのまま内回り線を走って田町駅へ行き、その先の留置線に入って折り返し、外回りの始発列車になる。
これはJR東日本の心意気、見事な采配だ。池袋始発の外回り列車を待てば、品川の始発は大崎駅始発列車より約30分早い。そこに田町始発が加われば、さらに早い時間帯の田町駅発、品川駅発の列車になる。現在、田町駅の始発は4時38分だ。この電車に乗れば、品川駅5時15分発の京急線、快特・羽田空港行きに間に合い、羽田空港国際線ターミナル駅着は5時30分だ。東海道本線や横須賀線で品川発5時台の列車に間に合う。新幹線は6時発だからもっと遅い電車でも間に合うけれども、1時間早く動けると余裕がある。山手線の各駅から、郊外へ向けた早朝の電車を利用できる。
先述したように、外資系ビジネスマンをはじめ、朝の時間を有効に使う人は少なくない。私も朝型で、特に旅先では朝が早い。車窓を楽しむ旅が多いから、始発列車で行動開始、日が暮れたら早々に床につく。都会の早朝の列車には、終列車に乗り遅れた人もいて、車内は前日の続きでもある。人々の生活時間が多様化する中で、本当は公共交通機関の24時間化が望ましい。それができなくても、山手線のような「始発列車を少しでも早める工夫と努力」は評価したい。
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