“トランプショック”で大リーグが氷河期を迎える危険性:赤坂8丁目発 スポーツ246(1/3 ページ)
ドナルド・トランプが大統領選を制したことで、思わぬところにも影響が及ぶかもしれない。米メジャーリーグ(MLB)だ。どういうことかというと……。
臼北信行(うすきた・のぶゆき)氏のプロフィール:
国内プロ野球、メジャーリーグを中心に取材活動を続けているスポーツライター。セ・パ各12球団の主力選手や米国で活躍するメジャーリーガーにこれまで何度も「体当たり」でコメントを引き出し、独自ネタを収集することをモットーとしている。
野球以外にもサッカーや格闘技、アマチュアスポーツを含めさまざまなジャンルのスポーツ取材歴があり、WBC(2006年第1回から2013年第3回まで全大会)やサッカーW杯(1998年・フランス、2002年・日韓共催、2006年・ドイツ)、五輪(2004年アテネ、2008年北京)など数々の国際大会の取材現場へも頻繁に足を運んでいる。
“トランプショック”は思わぬところにも波及してしまうかもしれない。米メジャーリーグ(MLB)だ。共和党候補のドナルド・トランプは米国大統領選挙で世紀の大番狂わせを起こし、民主党候補のヒラリー・クリントン氏に大差で勝利。これに色めき立っているのが、何を隠そうMLB周辺の関係者たちなのである。
現地時間の11月9日、GM会議が行われている米アリゾナ州スコッツデールでMLBのマンフレッドコミッショナーが記者会見を開いた。席上で同コミッショナーはトランプ氏の次期大統領就任が決まったことを受け「その影響は特に何も心配していない」とコメント。そして「米国の歴代大統領と我々MLBはこれまでも非常にいい関係を築いてきた。今後もそういう状態を維持できるし、よりいい形で発展を遂げていくと信じている」とも続けた。
周囲の騒ぎにクギを刺そうとしたのか。あるいはトランプ次期大統領にけん制球を投げたのか。いずれにせよ、マンフレッドコミッショナーはMLBが“トランプショック”とは無関係であることを世間に強く訴えた格好だ。
しかし、果たして本当にそうなのかは疑問符がどうしても拭えない。トランプは国内雇用を増やすことを政策として明言しており、それによって今後は米国内での外国移民に対する就労ビザの発給が以前よりも厳しさを増す可能性が高まっている。
メジャーリーガーはメジャー契約を結ぶ選手として即ビザ発給が認められているものの、下部組織でプレーするマイナーリーグの外国人選手たちにとってはかなりの死活問題だ。ビザ発給が困難になってメジャー昇格が以前よりも狭き門となってしまうことになりかねないからである。米スポーツ専門局「ESPN」でも早速、有識者が9日に放送された番組内で「あくまでも仮定の話ではあるが」と前置きした上で次のように懸念していた。
「メジャーリーガーの外国人プレーヤーに対しても即ビザ発給の制度を取りやめ、何らかの形で現在よりも厳しい制限枠を設けることになるかもしれない。とにかくトランプ次期大統領の今後はまったく読めないので『すべては米国民のためだ』と体のいいエクスキューズを付け、いきなりサプライズで政策を打ち出してくることも考えられる。
事実、トランプの複数の有力な支援団体が大統領選挙中に『メジャーリーグからの外国人選手を近い将来、全面排除すべく彼らへのビザ発給を停止にするべき。メジャーリーグは米国のものなのだ』との主張を真剣に訴えていたという話まで伝わってきていた。これが現実化する可能性は、あながち的外れなことではないのだ。
とにかくトランプ大統領誕生が米国の3大プロスポーツの中で最も多くの外国人プレーヤーを抱えるMLBにとって、とてつもなく大きな打撃を与えることにつながる確率は現時点で残念ながら高いと言わざるを得ない」
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