地方の公務員が送った米を、なぜローマ法王は食べたのか:スピン経済の歩き方(3/4 ページ)
ローマ法王に米を送った男をご存じだろうか。石川県羽咋市の職員だった高野誠鮮さんの仕事術が注目されている。人に頭を下げない、人に頼まない――といった方法で多くの人を動かしてきたという。どういうことかというと……。
「よろしくお願いします」がダメな理由
口で言ってしまうと簡単に聞こえるが、これを交渉の現場で実践している人は少ない。
ビジネスメールで、「よろしくお願いします」がもはや定例文になっていたり、会議や打ち合わせ終わりに、「よろしくお願いします」が決まり文句になっているように、我々の頭の中には、「頭を下げてお願いをする=仕事」という刷り込みがある。
事実、ドラマやマンガなんかでは、大きな商談をまとめるために土下座をしたり、しつこくしつこく食い下がる熱血ビジネスマンなどに、得意先の社長が「君の熱意に負けたよ」なんて優しい言葉がかけられたりしている。
確かに言われてみれば、オレも仕事で毎日、「お願い」ばかりをしているなという人も少なくないのではないだろうか。
「どうかお願いします(あなたには一銭の得にもならないけれど)」
「そこをなんとか!(無理なのはわかっているけど)」
これは利他の反対、利己です。特に仕事のうえで、特別な恩義もないあなたがどんなに頼み込んだところで、「どうか我が社のために」「私の営業成績のために」という姿勢では、相手のこころは動きようがありません。(はじめに より)
このような高野さんのお話を耳にしているうちに、なぜか20代のころ、とある有名SMクラブを取材したとき、女王様が「マゾの人ってすごくわがままなんですよ。あんまりひどいとこちらが“サービスのS”になるから嫌なんです」とおっしゃっていたことを思い出した。
ふざけているわけではない。SMというと単なる性的嗜好の話だと思うかもしれないが、実は双方の信頼関係があってはじめて成り立つコミュニケーションでもあるのだ。
女王様側の心情を無視して、「お願いします、叩いてください」と一方的に懇願するマゾというのは、自分の欲求しか頭にない。あまりにも利己的であり、興ざめする女王様もいるというのだ。仕事に対して真面目な人に限って、こういう状況に陥りやすい。
「上」からの期待に応えなくてはという強い責任感もあって、客や商談相手に一生懸命「お願い」をしているのだが、ハタから見ると、「会社のため」「自分の評価のため」に相手の事情などおかまいなしに物事を進める、「傲慢(ごうまん)な組織人」という印象を与えてしまうのだ。
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