急速に発展する武蔵小杉、駅周辺はどんなところなのか:○○駅の拠点力(武蔵小杉編)(3/3 ページ)
武蔵小杉のタワーマンションの高さがすごい。映画『シン・ゴジラ』でも二度目の上陸の際、ゴジラとほとんど高さが変わらなかったほど。今回は、急速に発展している武蔵小杉駅に迫る。
昔ながらの街並みが残るJR武蔵小杉
武蔵小杉の橋上駅舎をわたり北口へ出ると、バスターミナルがあり、多くの中小のオフィスビルがある。武蔵小杉タワープレイスという高層ビルが目立つ。JRの駅舎も頑丈そうで古くからあるといった趣の駅舎で、東急の駅のようなおしゃれな感じはない。こちらは、再開発される前の、工業地域だった武蔵小杉の面影を残している。
駅前には東急バスや川崎市バスが多く発着し、周辺住民の利用が多い。また昔ながらの中華料理店がいまなお残り、多くの客を集めている。南口にせよ北口にせよ、再開発が進む前からの商店街は、どこか庶民的だ。おしゃれなお店ではなく、安い中華料理店などが目立つ。
そんな中で、「サンマーメン」と書かれたのぼりを目にした。「サンマーメン」とは、ラーメンの上にもやし入りのあんをかけた、神奈川県独自の中華麺料理である。そののぼりが、「ここは神奈川県である」と高らかに主張しているようにさえ感じさせる。
もともと武蔵小杉は、職住近接の街だった。再開発が進むことによって、都心へと通う人が増えた。しかし、あくまで東京23区ではなく、神奈川県川崎市である。そんなことが、のぼりからは感じられるのだ。
工業地域だった武蔵小杉は、居住のための街へと姿を変える。駅東口には「家族の絆」のモニュメントがあり、歯車をモチーフにしつつも、愛を育む家族を象徴している。このモニュメントが、武蔵小杉のいまを象徴しているのだろう。
この連載は今回で終わります:
連載では、各駅がなぜ拠点であるかを記したと同時に、その地域の特徴を記しました。東京周辺の各地域は、さまざまな顔を持ちます。ひとつの駅周辺でも、さまざまな違いが見えます。
そこに「分断」を見るか、「個性」を感じるかは、人によってさまざまだと思います。ただ、各地域の特徴や個性は残しつつも、「分断」は解消する方向に進んでほしい、と筆者は考えます。
世界は「分断」にあふれています。先日のアメリカ大統領選挙では、そのことがよく分かりました。そういったものは、今後よりひどくなっていくのかもしれません。東京周辺でも同じです。ただ、そういったものを解消する方向を模索したいと思いながら、各地を歩きました。
駅は、拠点です。その拠点が栄えるのはいいことです。ただ、鉄道は多くの人に平等な乗り物であってほしいものです。都内周辺の鉄道路線は、基本的にどこもロングシートです。誰もが同じような電車に乗り、誰もが駅を利用する。そんなところに、東京周辺の素晴らしさがあると思います。
いままでお読みいただきありがとうございました。
著者プロフィール:小林拓矢(こばやし・たくや)
1979年山梨県甲府市生まれ。早稲田大学卒。フリーライター。大学時代は鉄道研究会に在籍。鉄道・時事その他について執筆。単著『早大を出た僕が入った3つの企業は、すべてブラックでした』(講談社)、共著に首都圏鉄道路線研究会『沿線格差 首都圏鉄道路線の知られざる通信簿』(SB新書)、ニッポン鉄道旅行研究会『週末鉄道旅行』(宝島社新書)。
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