「タレマネ」に成功する企業・失敗する企業:うまくいくポイント(1/3 ページ)
数年前にちょっとしたブームがあった。企業の人材を最大限に生かす「タレントマネジメント」である。その後、成果を上げているケースがある一方で、失敗しているところも。この成否を分けたものは、一体何だったのか?
数年前にちょっとしたブームがあった。企業の人材を最大限に生かす「タレントマネジメント」だ。多くの企業がこのシステムの導入に乗り出したものの、今になって振り返ってみると、その後着実に成果を上げている企業がある一方で、停滞や頓挫に直面する企業も多く、成功事例と失敗事例にはっきり分かれているように見える。
この成否を分けたものは、一体何だったのか? 多くの企業におけるタレントマネジメントの施策を支援してきたPwCコンサルティング シニアマネジャーの原田貴史氏に話を聞いた。
タレントマネジメントが注目を集めている理由
──今日、タレントマネジメントが注目を集めている理由や背景について教えてください。
原田: まず、昨今の経営環境として、事業の継続に加えて新たな事業を生み出す必要性が増す中で、人材活用が再認識されていることが挙げられます。多くの企業が既存のプロダクトやサービスを超えた新たなビジネスを模索し、かつて顔が見える範囲で解決できていた人的課題の解決を、全社レベルで最適化しようとされています。
また、経営と現場の双方が人材の質と量にまつわる問題に直面していることも背景にあります。労働力不足が叫ばれ久しいですが、事業推進上必要な人的リソースが自社に存在するのかを検証し、問題があれば打ち手を検討する必要性が高まっているのです。
加えて、海外でのM&Aなどにより、多くの日本企業が海外の人材を抱えるようになりましたが、国内と比べ海外の人材は顔が見えにくく、一定のガバナンスを効かせたり優秀な人材をつなぎとめておくためにタレントマネジメントに取り組まざるを得ない企業も増えてきました。そういった意味では、前回のブームよりも明確な目的意識をもってタレントマネジメントが検討されている傾向があります。
──タレントマネジメントというと、「幹部社員を育成するためのもの」というイメージを強く持っている方も多いかと思います。
原田: いわゆる「サクセッションマネジメント」ですね。海外企業で先行して行われてきた施策ですが、日本企業でも人事部門が次世代経営者や次世代マネジャーの育成のためにタレントマネジメントに取り組むケースが増えてきました。ただし、人材を採用する時点でポジションを明確に定義する欧米企業とは異なり、日本企業の多くは職能制度の下、必要とする人材のスキルや経験をきちんと定義して現有人材とのギャップを把握する取り組みに慣れていません。このことが、全社最適のタレントマネジメントの実現を阻んでいます。
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