「タレマネ」に成功する企業・失敗する企業:うまくいくポイント(3/3 ページ)
数年前にちょっとしたブームがあった。企業の人材を最大限に生かす「タレントマネジメント」である。その後、成果を上げているケースがある一方で、失敗しているところも。この成否を分けたものは、一体何だったのか?
タレントマネジメントを成功させるポイント
──タレントマネジメントの導入を成功させるためには、ほかにどんなポイントがありますか?
原田: 当初から全社レベルの大掛かりな仕組みを構築しようとするのではなく、まずはスモールスタートで成功体験を得て、その成果を基に徐々に適用範囲を広げていくやり方をお勧めします。
とある大手金融機関では、まずは経理部門に限定してタレントマネジメントを導入しました。職種を限定することで、海外の拠点や子会社も含めた全社レベルで横断的に職制や等級を統一しやすくなるのです。実際にこの企業では、グローバルレベルですべての経理人材のプロファイルやスキル、経歴が可視化され、円滑な人員補完や人事異動が実現されました。
──逆にすべての職種に渡って一気に人材情報を集めようとしても、なかなかうまくいかないことが多いのでしょうか?
原田: あらゆる職種に共通の情報を集めようと思うと、結局は最大公約数の"荒い情報"になってしまい、タレントマネジメントの実践に必要な情報が集まりません。結果、「人事部門にもビジネス部門にも役に立たない情報群」という状態に陥ってしまいます。これも、タレントマネジメントの導入に失敗する典型的なパターンです。
──ちなみに、企業におけるタレントマネジメントの取り組みは、今後どのような変化や発展を遂げていくとお考えですか?
原田: 短期的には、現状の「人事部門主導のタレントマネジメント」から、より「事業部門で役立つツール」としての色を濃くしていくと予想しています。それも、単にポジションにマッチする人材を探すためだけでなく、全社レベルに加え、事業側でビジネス戦略を練るためのツールとして使われるようなケースが出てくるでしょう。
また中長期的には、「技術革新」「人口動態の変化」「経済大国のシフト」「気候変動と資源の枯渇」「都市化の加速」といったメガトレンドを踏まえたタレントマネジメントの活用法が増えてくるはずです。AI技術による知識労働のIT化を見据えた人材ポートフォリオの再考や、地域や世代の指向を考慮した採用・育成戦略の立案、イノベーション創出に向けた人材特性の把握などといったテーマが、将来タレントマネジメントが扱う領域になってくるのではないでしょうか。
──ありがとうございました。
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