福岡の復旧工事に海外絶賛! その裏で:世界を読み解くニュース・サロン(4/4 ページ)
JR博多駅近くの道路が陥没したニュースは、世界的に大きく報じられた。迅速に復旧したこともあって、海外メディアから絶賛の声が目立つが、その裏で気になることも。それは……。
効果的なPRになった
いずれにせよ、「Fukuoka」という名前が世界に広まったのは確かである。また、実はちょうど迅速な復旧が取りざたされている絶妙のタイミングで、米「CNN」が、福岡でビジネスを行う魅力を伝える記事を掲載している。福岡が、次のシリコンバレーを目指している、という趣旨の記事を動画付きで電子版にアップしたのだ。
内容的には、福岡が日本の大都市の中で最も開業率(スタートアップ)が高いという話や、人口増加率が日本の政令市で一番高く、英モノクル誌による世界住みやすい都市ランキングで5位に入った(ちなみに1位は東京、9位は京都)ことなどが紹介されている。
もともとこの映像は8月にCNNで放映されたものだ。このタイミングでの電子版への掲載が、陥没事故の復旧のニュースに合わせたものなのかどうかは分からないが、陥没した道路で通行が再開した翌日の16日に、CNNの公式サイトに初めて掲載されている。配信側の編集者にしてみれば、陥没事故で名前が検索されるタイミングに合わせて、この記事を掲載しようとするのは自然なことだろう。便乗してネットユーザーのアクセス数が得られるからだ。
グーグルで「Fukuoka」と検索すると、迅速な復旧のニュースと、イノベーション都市を目指す福岡の記事が上位に現れる。陥没事故の後、一気に福岡の名前が世界的に露出された。
今回の陥没事故については、そもそも事故が起きないほうが大事だし、復旧もその原因となった地下鉄工事も、地元では冷ややかにみる向きもある。だが、それでも福岡にとっては、次のシリコンバレーを目指す仕事の能率が高い都市として、願ってもない効果的なPRになったことは間違いなさそうだ。
筆者プロフィール:
山田敏弘
ノンフィクション作家・ジャーナリスト。講談社、ロイター通信社、ニューズウィーク日本版に勤務後、米マサチューセッツ工科大学(MIT)でフルブライト研究員を経てフリーに。
国際情勢や社会問題、サイバー安全保障を中心に国内外で取材・執筆を行い、訳書に『黒いワールドカップ』(講談社)など、著書に『モンスター 暗躍する次のアルカイダ』(中央公論新社)、『ハリウッド検視ファイル トーマス野口の遺言』(新潮社)がある。
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