1億円以上の金融資産を持つ「富裕層」は、日本にどれほどいるのだろうか――。野村総合研究所の調査では、日本の総世帯数の40分の1程度にあたる約122万世帯が富裕層に該当し、増加した結果2000年以降で最多になったことが分かった。
預貯金・株式など金融資産の合計から負債を差し引いた「純金融資産保有額」が1億円以上の世帯を「富裕層」、5億円以上の世帯を「超富裕層」と定義してまとめた。
調査によると、2015年現在での富裕層の合計は121.7万世帯で、富裕層が114.4万世帯、超富裕層が7.3万世帯だった。これまでの最高だった13年の計100.7万世帯を大きく上回り、2000年の調査開始以来最も多かった。13年と比べ、富裕層と超富裕層は純金融資産額をそれぞれ17.3%、2.7%増やしていた。
大多数を占めるのは3000万円未満の「マス層」で、4173万世帯・約78%。その資産額合計は603兆円と、全体の43%に過ぎない。富裕層・超富裕層は全世帯の2%強という少数派だが、資産額では全体の約20%を占めている計算になる。
富裕層・超富裕層が増加した要因として、(1)アベノミクスによる株価の上昇が長期間続いたこと、(2)相続税の課税が強化されたため、生前贈与が活発化していること――の2点を挙げている。
株価上昇で得た利益により、資産が5000万円〜1億円未満だった準富裕層の世帯が富裕層へ、そして富裕層の世帯が超富裕層へと2年間かけてシフトしたとみている。ただ、今年に入ってからは、円高や株価の低迷により、純金融資産額は伸び悩み気味だという。
生前贈与については、企業のオーナーをつとめる富裕層・超富裕層のうち43%が「実施したことがある」と回答。「生前贈与をできるだけ早く進めたい」と答えた人は47%を占め、「生前贈与に抵抗がある」と答えた人は3割に満たなかったため、今後もニーズが拡大していく可能性が見受けられた。
同社は、「資産の生前贈与が進むことで、富裕層・超富裕層の資産が相続の時期を待たずに次世代に移転し、経済活動の活発化が期待される」とみている。
世帯ごとの資産額の調査は、国税庁・総務省・厚生労働省などのデータをもとに推計した。企業オーナーへの調査は8月〜9月にかけて、事前調査で「1億円以上の資産を持つ」と答えた354人を対象に郵送アンケート形式で実施した。
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