大和証券に学ぶ、タレマネ最前線:全社員参加型(前編)(3/5 ページ)
従業員の能力を生かすシステム「タレントマネジメント」を導入する企業が増えてきた。日本企業をみると「全社員型」を試みているところが多いが、具体的にどのようなことを行っているのか。大和証券グループ本社の事例をみると……。
大和証券グループ本社に学ぶタレントマネジメント最前線
大和証券グループ本社は、全社員の自発的なキャリア開発を促すタレントマネジメントの仕組みづくりに取り組んできた。その特徴は、個人のキャリア自立を促す多様な学習機会の提供と、それを評価報酬制度と連動させる一連の仕組みにある。
多様な学習機会と評価報酬制度の連動
同社では、2005年から資格取得や研修受講をポイント制にし、ポイント獲得数を昇格時の必要要件としている。
こうした取り組みの狙いについて、板屋篤人事部長は、「当初は多くの社員から驚きと反発の声が上がった。しかし、5年後、10年後のビジネスを見据えると、従来の証券会社で求められてきたマーケットの知識だけでは不十分で、必要な知識・スキルは広がっていく。若手に限らず、ベテラン社員を含めて新しい知識・スキルを自発的に身につけてほしいと考えた」と語る。
しかし、いくら会社側が研修の受講や資格取得を奨励しても、社員にキャリア意識や自ら学ぼうとする姿勢がなければ、絵に描いた餅に終わる。同社では、社員が自らのキャリアを主体的に考え、学ぶ姿勢を持つためにユニークな取り組みを行っている。
例えば、2015年からスタートした「ライセンス認定制度」。企業がベテラン層の活躍を積極的に支援していくこれからの時代、65歳まで皆が働くとすると、45歳はキャリアの折り返し点。しかし、現実は45歳を超えてくると急激に学習意欲が落ちてくることが社内調査で分かった。そのため、45歳以降に取得した資格・研修および勤務実績をポイント化し、一定基準をクリアすればライセンス認定し、55歳以降の処遇を優遇することで、もう一段の学習意欲を引き出す仕組みだ。60歳以降の再雇用後についても、認定者は優遇される仕組みとなっている。このポイントは、45歳までに取得した資格や受講した研修も加算される。この層に向けた約30種類のeラーニングも用意し、随時コンテンツの拡充もしている。第1回目となる2016年度は、152名のライセンス認定者が誕生した。
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