大和証券に学ぶ、タレマネ最前線:全社員参加型(前編)(4/5 ページ)
従業員の能力を生かすシステム「タレントマネジメント」を導入する企業が増えてきた。日本企業をみると「全社員型」を試みているところが多いが、具体的にどのようなことを行っているのか。大和証券グループ本社の事例をみると……。
人事施策の積極的な情報開示
こうした人事施策が全社員に活用されるために、情報開示にも積極的だ。
例えば、2007年から作成している「キャリアデザインブック」。各部門の紹介や転向・登用制度、海外MBA留学制度の応募時期、昇格の時期やそれに必要な資格ポイント、ライセンス認定制度の内容など、人事制度や教育研修制度などの詳細が余すところなく掲載されている。
当初、全ての情報を社員に開示することに対して、人事部内でも賛否両論があったという。
しかし、板屋人事部長は「全員に常にチャンスがあり、一人ひとりが少しずつ何かを目指している状態を作りたい。そんな思いから、社員本人のキャリア選択を促すため、会社からは必要条件を提示し、支援策として研修や資格補助制度などを充実させてきた」と語る。
こうした取り組みが奏功し、今では社員のキャリア意識や学ぶ意欲は着実に高まってきている。
例えば、2005年当時、CFP資格(CFPは日本FP協会の登録商標。サーティファイドファイナンシャルプランナー)を持っている社員は約190名だったが、今では600名を超えているという。証券アナリスト資格保有者やTOEICの高得点者も増えているが、顕著な変化はビジネススキル研修受講者の増加だ。約5年前は1回の募集に対して500名程度の応募だったのに対して、今では1700名以上の応募があり、年間で延べ3000人を超えるまでになっているそうだ。さらに、当初は若い課長代理クラスの応募が多かったが、今では入社3年目から50代までの幅広い社員が応募しているという。
こうした現状に対して、板屋人事部長は、「現在の仕事や、どういうキャリアを歩んでいきたいかを自分で考えて選ぶことが自律的なキャリア形成につながると考えている。もちろん昇格のために必要だからという思いもあるだろうが、キャリアを意識して自ら学ぶカルチャーが定着してきていると感じている。ただし、まだまだやれることがあると思っているので、社員の成長意欲を促す取り組みに積極的にチャレンジしていきたい」と語る。
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