大和証券に学ぶ、タレマネ最前線:全社員参加型(前編)(5/5 ページ)
従業員の能力を生かすシステム「タレントマネジメント」を導入する企業が増えてきた。日本企業をみると「全社員型」を試みているところが多いが、具体的にどのようなことを行っているのか。大和証券グループ本社の事例をみると……。
タレントマネジメントシステムによる個の見える化と適所適材
社員一人ひとりの学習履歴は、人材情報のデータベース上で管理されている。
「以前は人事担当者ごとの情報に依存し、他の人は把握できていない状況でした。しかし、当社には約9000人の社員がいて、全員を把握するには限界がある。システムの導入によってすべての情報が『見える化』され、個人データを見ながら一人ひとりの社員を把握し、どういう仕事に適性があるのかについて、組織として考えられるようになった」(板屋人事部長)
2008年に導入された同システムには、社員個々の過去から現在までの人事評価、自己申告書の内容や人事異動の履歴、また多面評価結果や保有している資格、受講した研修などの情報が蓄積されており、今では人事異動にも積極的に活用されている。
以上、大和証券グループ本社の先進的な事例を手掛かりに、「全社員型タレントマネジメント」の実現に不可欠な「個人のキャリア自立」を形成・促進するためのヒントを探ってきた。そのポイントをまとめると以下のとおりである。
大和証券グループ本社に学ぶ「個人のキャリア自立」を形成・促進する3つのポイント
(1)全社員に対して、多様な学習機会を提供する
(2)個人の学習成果を評価報酬制度と連動させることで、主体的かつ継続的にキャリア形成する仕組みをつくる
(3)そうした仕組みを全社員に対して積極的に情報開示することで、「全社員」のキャリア自立を促す
後編では、「個人のキャリア自立」を前提とし、全社員の活躍を促すための育成および適所適材の先進事例として、サントリーホールディングスの取り組みをご紹介する。
(つづく)
著者プロフィール:
株式会社パーソル総合研究所 副社長執行役員 兼 リサーチ部部長 機関誌HITO編集長
櫻井 功
日本の都市銀行(現メガバンク)において、17年間、国内支店、国際金融部門、大企業営業部門、人事部門、米国現地法人等を経験したのち、GE、シスコシステムズ、HSBCの人事リーダーポジションを歴任。直近では大手リテールチェーンの人事担当役員として、人事制度改革並びにそれを通じた風土改革プロジェクトをリードし、IPO実現に寄与。2016年5月より現職。
パーソル総合研究所とは
アジア・パシフィック地域最大級の総合人材サービス会社であるパーソルグループのシンクタンク・コンサルティングサービスを提供する総合研究機関。戦略的人事の実現に向けて、膨大な人事戦略にまつわるデータを見える化するタレントマネジメントシステムHITO-Talentを提供している。
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