サントリーに学ぶ、タレマネ最前線:全社員型(後編)(3/4 ページ)
従業員の能力を生かすシステム「タレントマネジメント」を導入する企業が増えてきた。日本企業をみると「全社員型」を試みているところが多いが、具体的にどのようなことを行っているのか。前回の大和証券グループ本社に続き、今回はサントリーホールディングスの事例をご紹介する。
社員のキャリア情報を積極的に収集・活用し、適所適材を生かす取り組み
サントリーホールディングスのもう一つの特徴は、適所適材を実現する仕組みにある。
同社では、社員の異動を検討する際に最も重視するのが、「本人のキャリア希望」だ。異動担当者は、社員の情報を上司から間接的に収集するだけでなく、直接社員一人ひとりと向き合うことにこだわる。キャリアや異動の希望を示す「自己申告制度」を有する企業は少なくはないが、それに加え人事が本人と定期的に直接向き合い、情報の収集や意思の確認をするのは、このクラスの企業では少ない。同社では入社4年目と9年目の社員には全員と面談をし、それ以外にも年間500人以上の社員と1対1の面談を実施している。面談では、今の職務に対する思いや将来どんなキャリアを歩みたいのかについて聞き、そこで得たさまざまな情報をタレントマネジメントシステムに蓄積していく。
同社は、4年前にタレントマネジメントシステムを導入した。システムには、社員本人の基礎情報や発令履歴に加え、上司から見た現職の適性、強みや弱み、中長期のキャリアの方向性やアドバイスなどの情報が含まれる。さらに、過去の人事考課や異動時の上司からの申し送り事項、本人のキャリア希望と本人と上司の考えるサクセッサーやポスト要件、人事部の面談記録など、ありとあらゆる情報が網羅されており、適所適材を実現するための異動に活用されている。
キャリア情報の積極的な開示によるキャリア自立の促進
社員が自律的にキャリアを考えるには、会社内にそもそもどんな機会(職務・キャリア)があり、希望を叶えるためには何が必要かを明示することも重要だ。
サントリーホールディングスでは、イントラネット上にキャリアビジョン情報サイトが公開されている。主なコンテンツは2つ。1つは、部署ごとに、仕事内容・求める人物像・仕事の魅力や担当者のやりがいなどを掲載している「組織を知る」コーナーで、もう1つは若手社員から部長クラスまで幅広い社員のキャリアを掲載している「サントリアンのキャリアを知る」コーナーだ。キャリアの転機、一皮向けた経験、今でも覚えている上司の一言など、本人たちが感じた言葉が赤裸々に表現されている。
子育て中の社員から経営者まで多様な社員のキャリア情報に触れそこに行くのに必要なスキルや経験を知ることで、全社員が自分らしいキャリアビジョンを描き、キャリア自立を促すことができる仕組みとなっている。
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