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なぜ鉄道で「不公平政策」が続いたのか?杉山淳一の「週刊鉄道経済」(2/5 ページ)

赤字の鉄道路線の存続問題を議論するとき「鉄道は他の交通モードに対して不公平な立場にある」という意見がしばしば見受けられる。JR北海道問題もそうだし、かつて国鉄の赤字が問題になったときも「鉄道の不公平」が取りざたされた。なぜ鉄道は不公平か。どうしてそうなったか。

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鉄道会社が車両を貸し借りする

 この直通運転の仕組みはどうなっているか。車両は直通しているけれど、営業面では、境界となる駅できっちりと線を引いている。A鉄道、B鉄道の線路があれば、乗客が支払った運賃は、それぞれ境界の駅を基準とし、乗車した距離に応じて分配される。どの会社の車両に乗っても関係ない。A鉄道線内だけ乗車して、その車両がB鉄道の所有だとしても、運賃はA鉄道のものだ。B鉄道には支払われない。

 しかし、これは乗客がきっぷを買う視点の話だ。実は鉄道会社間で精算が行われる。上の例の場合、乗客はB鉄道の車両に乗ったわけだから、B鉄道の車両の使用料が発生しないとおかしい。しかし、乗客一人一人について、乗った車両まで判別すると大変な手間になる。そこで、A鉄道とB鉄道が車両を貸し借りした契約にする。A鉄道でB鉄道の車両を運行した場合、A鉄道がB鉄道の車両を借りたとみなし、車両使用料を払う。

鉄道会社は自社の線路と車両で運行する。直通運転の場合、他社の車両が乗り入れたときは、他社の車両を借りて運行したと考えて、車両の使用料を支払う
鉄道会社は自社の線路と車両で運行する。直通運転の場合、他社の車両が乗り入れたときは、他社の車両を借りて運行したと考えて、車両の使用料を支払う

 ただし、これも面倒な話だ。何時何分の列車がどの区間を走ったか、その距離に応じた車両使用料をその都度精算するなんて実に手間だ。そこで物々交換を行う。列車はダイヤで運行予定を決めているから、あらかじめ、「A鉄道の線路をB鉄道の車両が走る距離」と、「B鉄道の線路をA鉄道の車両が走る距離」が等しくなるように車両を手配する。これで貸し借りナシ。いちいち現金で精算して銀行に支払う手数料もナシだ。それでもピッタリ同じというわけにはいかないから、ときどき「精算運転」が行われる。いつもA鉄道の車両を使うけれど、今日だけB鉄道の車両にする。

相互直通運転の場合、互いに車両を貸し借りしている。お互いに車両の使用料を支払う形となる。実際には走行距離を同じにそろえ、相殺する
相互直通運転の場合、互いに車両を貸し借りしている。お互いに車両の使用料を支払う形となる。実際には走行距離を同じにそろえ、相殺する

 先に挙げた「あさぎり」の場合は、小田急の車両だけがJR東海に乗り入れるから、JR東海側に小田急への車両使用料が発生している。お互いの切符の売り上げから相殺するとか、それなりの精算方法がとられているはずだ。

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