養殖を変える日本発衛星&遺伝子ベンチャー:宇宙ビジネスの新潮流(3/3 ページ)
21世紀は「養殖の時代」と言われる。既に天然漁獲高と匹敵しており、将来的には養殖が市場全体の3分の2を占めるという。そうした中、愛媛で世界の養殖産業を変え得る実証事業が行われているのだ。ユニークなのは、衛星技術とバイオ技術を駆使している点である。
狙うは東南アジアの養殖市場数兆円
将来的には東南アジアも有望市場として見ています。養殖の世界ではノルウェーなどの大規模養殖が注目を集めていますが、私は日本や東南アジアで行われている小口養殖にリスク分散や生育管理の観点から可能性を感じています。小口養殖なので生産者側の投資余力は限られますが、ウミトロンがデータサービスを提供することで効率化が可能と思います。
具体的にはインドネシア、タイ、ベトナム、中国などを視野に入れています。特にインドネシアではタイ、クエ、エビなどを養殖しています。日本の養殖産業は4000億円で横ばいですが、インドネシアではGDPの15%を占め、毎年20%程度成長しています。既にウミトロンではシンガポールにも拠点を構えており、今後市場開拓を進めていきたいと思います。
さらに、エサの最適化と生産コストの低減というだけではなくて、将来的には生育の高度化にもチャレンジしたいと思っています。養殖で難しいのが、早く育てるということです。遅らせることはエサの量で調整可能なのですが、早く育てることは難しいです。もし現状2年かかるのが、1年半でできるようになれば生産性が著しく向上するのは間違いありません。
藤原氏との対談はあっという間だった。筆者もこれまでさまざまな衛星データ利用を見てきたが、養殖産業への適用は視点としてとてもおもしろく、可能性を大きく感じるテーマだ。ウミトロンの今後の挑戦を期待したい。
著者プロフィール
石田 真康(MASAYASU ISHIDA)
A.T. カーニー株式会社 プリンシパル
ハイテク・IT業界、自動車業界などを中心に、10年超のコンサルティング経験。東京大学工学部卒。内閣府 宇宙政策委員会 宇宙民生利用部会 委員。民間宇宙ビジネスカンファレンス「SPACETIDE2015」企画委員会代表。日本発の民間月面無人探査を目指すチーム「HAKUTO(ハクト)」のプロボノメンバー。主要メディアへの執筆のほか、講演・セミナー多数。
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