コンビニは高齢化社会に対応できるのか:コンビニ探偵! 調査報告書(3/4 ページ)
人口の高齢化は社会問題になっている。コンビニ業界でも高齢化への対策は課題であったが現状はあまり進んでいない。今回は、コンビニが高齢化社会にどう対応していくべきかを考えてみたい。
コンビニの接客マニュアルは“対認知症”ではない
先述のとおり、品ぞろえに関しては多くのコンビニで高齢化対策が進んでいるが、現場で起きる問題は別にある。認知症の人への対策は、ほぼ手つかずのままだ。
上のグラフを見てほしい。2015年の時点で、認知症を有する高齢者は250万人を超えているとの推測だ。この中には、日常的にコンビニを利用している人も含まれている。
ただ、認知症の人が増加しているとはいえ、1店舗当たりの来店客数の割合は低い。そもそも、コンビニの接客マニュアルはお客さんが認知症であることを前提としていない。
認知症は、段階的に症状が異なる。主な症状に「突然従業員を怒鳴りつける」「お金を持ってきていない」「わけの分からないことを言い出す」などがある。徘徊(はいかい)する人は、はたから見ても認知症と認識できるので警察などに協力を要請できるが、軽度の認知症の人は表面的には分かりづらく、コンビニ従業員や他のお客さんとの間にトラブルが生じやすい。
また、筆者も含め、ほとんどの従業員は認知症に対する理解が進んでいない。知り合いの介護支援専門員(ケアマネジャー)に話を聞いたことがあるが、認知症のレベルによっても対処法が異なるので、結局は「専門家でないと対応が難しい」ということが分かっただけだった。
そして、多くのコンビニのオペレーションの中心はアルバイトだ。オーナーをしていた筆者でも対応し切れないことを、雇ったばかりのアルバイトにできるわけがない。だから、従業員がお客さんから突然怒鳴られたとしても、その人が何に腹を立てているのか分からず途方にくれることも。そもそも、怒鳴られる原因がないことすらある。ただ、従業員にとっては災難でしかない。何が原因なのかも分からず、余計なストレスの種となり、アルバイトを辞めるきっかけとなることさえある。
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