シンガポールに学ぶ、カジノ実現の進め方:世界を読み解くニュース・サロン(1/5 ページ)
カジノを含む統合型リゾート(IR)を推進する法案が可決された。安倍首相はIRを成長戦略の一環だと位置付けているが、実現するにはまだまだハードルがたくさんある。一足先にカジノ解禁に踏み切ったシンガポールはどのような議論を経て、実現することができたのか。
世界を読み解くニュース・サロン:
今知るべき国際情勢ニュースをピックアップし、少し斜めから分かりやすく解説。国際情勢などというと堅苦しく遠い世界の出来事という印象があるが、ますますグローバル化する世界では、外交から政治、スポーツやエンタメまでが複雑に絡み合い、日本をも巻き込んだ世界秩序を形成している。
欧州ではかつて知的な社交場を“サロン”と呼んだが、これを読めば国際ニュースを読み解くためのさまざまな側面が見えて来るサロン的なコラムを目指す。
日本でカジノを含む統合型リゾート(IR)を推進する法案が12月15日未明に成立した。大手紙がこぞって反対の姿勢を見せたこの法案は、とにかく物議を醸した。
安倍晋三首相はIRを成長戦略の一環だと位置付けている。もちろん、日本にカジノができれば観光客の増加が見込める。2016年9月の英フィナンシャルタイムズ紙によれば、カジノによる経済効果は400億ドル(約4兆6000億円)にもなるといい、マカオの約270億ドル、ラスベガスの約60億ドルを大きく上回ることになる。そのほか、フランスやドイツ、オーストラリアや韓国などよりも大規模になりそうで、雇用も生まれる。
そんなカジノだが、日本で議論が行われる際に引き合いに出されることが多いのが、約50億ドル規模であるシンガポールのカジノだ。安倍首相も「視察したシンガポールの施設はカジノだけでなく、ホテル、劇場、ショッピングモール、水族館、テーマパークも構成していた。外国人観光客が2020年に4000万人を目指す中、ビジネスや会議だけでなく、家族で施設を楽しむことができる」と述べている。また萩生田光一官房副長官はフジテレビの番組で「複合的な施設の中で、一部にカジノを特別に許可するもの」と答えているが、これはまさにシンガポールが取ってきたアプローチと同じだ。
著者はちょうど、シンガポールでカジノ解禁に向けた協議が熱心に行われていたころにシンガポールに住んでいて、議論をリアルタイムで見ていた。安倍首相や萩生田副長官の発言のように、シンガポールから日本が学べることは多い。当時、反対意見が渦巻くなかカジノ計画を推し進めたシンガポールは、どうカジノ解禁までこじつけたのか。
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