シンガポールに学ぶ、カジノ実現の進め方:世界を読み解くニュース・サロン(2/5 ページ)
カジノを含む統合型リゾート(IR)を推進する法案が可決された。安倍首相はIRを成長戦略の一環だと位置付けているが、実現するにはまだまだハードルがたくさんある。一足先にカジノ解禁に踏み切ったシンガポールはどのような議論を経て、実現することができたのか。
シンガポール、カジノ解禁までの道のり
そもそもシンガポールのカジノ解禁には時間がかかっている。シンガポール政府は2004年12月に、カジノ建設に乗り出したいカジノ運営会社の公募を開始した。その後、9カ月を使って国民などと議論を行い、カジノ解禁について検討を実施。そして2005年2月には世界から19社のカジノ運営会社が名乗り出てカジノ計画案を提出した。
シンガポール議会は、まず2005年4月にカジノ候補地となる2カ所を制定。12月にはどの会社に運営権を与えるのかを決める閣僚の委員会が発足される。こういう動きは国内で大きく報じられ、そのたびに議論を生み、カジノ解禁に向けた国民の意識に対する地ならしになっていた感がある。
議会は2004年12月の運営会社の公募から1年ほど経った2006年2月に、満を持して「カジノ管理法案」を可決した。日本同様、シンガポールではそれまでカジノは法律で禁止されていたが、IRの一部としてカジノを解禁したのである。
それからさらに約1年ほど後の2006年、最終的に2社、米カジノ大手ラスベガス・サンズ(マリーナベイ・サンズ)と、マレーシアのゲンティン(リゾートワールドセントーサ)が運営会社に選ばれた。
ちなみに、当時サンズが選ばれたのは意外だと言われたが、決め手になった条件のひとつには、サンズが、年間20の展示会と350以上のコンベンション(ビジネス会議)をシンガポールにもたらすことができると主張したことがあった。つまりカジノと合わせて、運営会社が人を集める実績なども評価されたと報じられていた。
シンガポール政府は国民に対して、この事業はあくまで統合型リゾート・プロジェクトが先にあってカジノはその一部でしかないと繰り返し強調してきた。萩生田副長官の発言のニュアンスと同じだ。
そして政府は、全敷地内でカジノが占めるスペースの割合を5%以下にすることを定めた(日本は3%程度とされる)。リー・シェンロン首相による05年のカジノ解禁の声明でも、「このリゾート開発は1年以上の間、政府によって検討されてきたプロジェクトだ。それにはカジノのような賭博場も含まれている」と遠回しな言い方をしている。
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