ダイハツ製トヨタ車、バカ売れは予定通り:池田直渡「週刊モータージャーナル」(2/4 ページ)
トヨタの新型車「ルーミー」と「タンク」がバカ売れしている。単純合計すると3万5900台で、目標の10倍になろうかという勢いである。そこまで好調な理由とは……?
軽自動車のノウハウで小型車を変える
そもそもトールは、軽自動車で培った背高モデルのノウハウをリッターカークラスに適用したもの。だから軽自動車のノウハウが大きくモノを言う世界である。ネット上では口さがない人たちが「スズキ・ソリオのパクリだ」と言うが、筆者の正直な感想を言えば、軽のやり方を小型車に持ち込むという手法は誰が考えても思い付く普通の発想で、パクリだと騒ぐほど独創性に満ちた企画ではない。確かに、トヨタは過去に他社のヒットモデルをつぶすキラーモデルを投入してきた実績があるのは事実だが、今回ばかりはそれを糾弾するのはちょっと違うように思う。
さて、クルマの話に移る。まずは車両サイズを見てみよう。カッコ内は比較としてタントのサイズを記載してみる。
全長 3700(3395)mm
全幅 1670(1475)mm
全高 1735(1750)mm
ホイールベース 2490(2455)mm
室内長 2180(2200)mm
室内幅 1480(1350)mm
室内高 1355(1365)mm
前後乗員間距離 1105(1120)mm
最小回転半径 4.6(4.4)m
この数値を見ると外寸が前後左右に広がっており、そこで無理をしなくて良い分、全高が控えめになっていること。室内長は荷室ニーズの差の分、トールの方が短くなっているが、室内幅では130ミリも広がっている点が目に付く。
全幅を拡大し、かつ全高を抑えていることは乗り心地でも効いてくる。本来は前後トレッドの平均値と重心高の関係で見るべきだが、リヤのトレッドはモデルによっても異なるし、重心高は装備別に変わってしまう。モデルごとに計算しても煩雑だし、所詮は目安なので、簡易的に全高を全幅で割った値で見てみる。
トール 1735/1670=1.039
タント 1750/1475=1.186
つまり、左右のタイヤの踏ん張り幅に対しての背の高さの割合はタントの方がかなり高くなっている。こういうクルマをコーナーで倒れないように踏ん張らせようと思うと、サスペンションのばねを硬くせざるを得ない。3カ月前に試乗した女性向け軽自動車の「ムーブ・キャンバス」はユーザー対象とマッチしない硬い脚になっていたので、同じく背高ボディのトールも心配したのだが、乗り心地はぐっとマイルドで、心配は杞憂(きゆう)だった。
理由は上述の通りで、全幅が広がり全高が減った。それにより、ロールに対抗するのにムーブ・キャンバスほど硬いばねを使う必要がなくなったからだ。乗り心地はこの種のクルマとしてはマイルドで、直進安定性がとても高い。高速道路でレジャーに出掛けることが苦痛にならない、良い出来だ。騒音面は直進安定性ほど特筆するには及ばないが、かなり静かな部類に入るだろう。余談だが、この仕上がりの差を見るにつけ、軽自動車の寸法規定のいびつさを感じざるを得ない。
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