ダイハツ製トヨタ車、バカ売れは予定通り:池田直渡「週刊モータージャーナル」(3/4 ページ)
トヨタの新型車「ルーミー」と「タンク」がバカ売れしている。単純合計すると3万5900台で、目標の10倍になろうかという勢いである。そこまで好調な理由とは……?
トールとソリオの思想の違い
エンジンはダイハツ製KR型の3気筒で、無過給と過給が選べる。ダイハツではターボモデルを「1.5リッタークラス相当のトルクを発揮する」と言う。エンジニアと話をする限り、速く走らせたい人に向けたユニットと想定しているらしい。
そこはちょっと筆者と意見が違う。乗ってみるとなるほどターボ付きはパワーがあるが、一方でノンターボがどうにも力不足という印象は受けない。しかしながら、それはCVT(Continuously Variable Transmission)がせっせと仕事をして低速トルクの不足を補っているからで、少し加速したいつもりでアクセルを開けても、勇ましくエンジン回転を上げて加速を始める。だから穏やかに落ち着いて乗りたい人にこそ、あまり変速比を変えずにエンジンのトルクで走らせようとするターボモデルの方が合っていると思う。エンジンが加速の度に吹き上がることが気にならない人ならば、ノンターボには燃費面でメリットがある。
せっかくこうしたクルマに乗るのだから、直接のライバルであるスズキ・ソリオに事前に乗っておいた。スペック上は似通った2台だが、クルマ作りの方向性には違いを感じた。ソリオはある意味素っ気ない道具感が魅力で、できる限り安くてちゃんと走るものを作ろうと言う姿勢が見える。良くも悪くも開き直っている。それを清々しいと感じるか、高級感がないと感じるかは人それぞれだが、ソリオの潔さそのものはとても共感できた。
しかし、限られた予算の中で少しでも高級感がほしいといった要望にソリオは応えてくれない。トールはそういう人の性のようなものをすくい上げてくれる部分がある。例えば乗り心地がそうだ。ソリオは、突き上げは突き上げとしてあるがままに伝えてくる。その分ドライバーの意図する操作に対するクルマの動きも夾雑物(きょざつぶつ)がなく伝わるキビキビとしたキレの良さがある。
一方でトールは、そこを少しでもマイルドで柔らかなものにしたいというエンジニアの気持ちが感じられる、柔らかく厚ぼったい印象のものになっている。それは小型車とはどういうものかというリファレンスが、ダイハツとスズキで違うということなのだと思う。極めて端的な例で言えば、トールのインパネの各部樹脂にはステッチを模したデザインがあしらわれている。言うまでもないが、それは革張り内装の文法をコピーしたものだ。しかしながら誰もそれを本物の皮革だとは思わないだろうし、クルマに乗り込むときに本革内装を期待する人もいまい。それでもステッチを入れたい心が良くも悪くもトールにはある。
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