「ディスっても大丈夫」法が成立、書くよ!:世界を読み解くニュース・サロン(2/4 ページ)
米国で、興味深い法案が成立した。「消費者レビュー公正法」である。あまり聞き慣れない言葉だが、一体どういった法律なのか。
法案が前進したきっかけ
情報サイトの口コミは、多くが買い物やサービスを受ける前にチェックするほど影響力が強い。買い物で言えば、米国では、物を購入する際に81%がネットで商品について調べるという。85%は10件以上の口コミをチェックし、88%は知人などが推薦するのと同じように、口コミを信じると答えている。
かなり影響力があるので、米国では口コミサイトなどに批判的なコメントをさせないために、店やサービス提供側が批判を「口止め」するための条項を設けている場合がある。商品やサービスを口コミサイトでディスれば罰金を科すという条件を注意書きに含めている店があるのだ。
今回の「消費者レビュー公正法」制定の議論を加速させるきっけかとなった象徴的なケースがある。ユタ州で2013年、夫婦がオンライン通販サイトからクリスマスギフトを購入。しかし商品が配達されずに店側から勝手にキャンセルされたため、夫婦は消費者苦情サイトに、この通販サイトを叩くコメントを投稿した。
するとしばらくして、この夫婦が「否定的なコメントをしない」という契約条項を破ったとして、通販サイト側が投稿を削除するか罰金3500ドルを払うかを要求する。結局このケースは裁判沙汰に発展した。すぐに訴訟になるのは、裁判大国の米国ならではである。
米上院商業委員会は2015年11月4日、このケースに関する公聴会を開き、結果的に今回の法案が前進するきっかけとなった。
またこんなケースも報じられている。2016年5月にペットシッター会社がイェルプのレビューで酷評された。するとこの会社は、レビューを書いたカップルに対して「口止め条項」に違反したとして100万ドルの賠償金を求めて訴訟を起こした(後に放棄)。
このほかにもニューヨークのホテルが、否定的な口コミに500ドルの罰金を科すと利用規約に記載していて問題になったり、批判的なレビューを書くと口にするだけでも250ドルの罰金を取るとしていた携帯電話アクセサリー店が批判されたりした。
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