AIに関する「よくある誤解」10選:このままでは“人材不足”に
AI(人工知能)への関心が高まった2016年。多くの企業がAI技術をビジネスに生かそうとしており、AIを活用した製品やサービスの発表が相次いでいる。しかしその一方で、AIに対する誤解も見られるようになっている。ガートナー ジャパンが10の「よくある誤解」を発表した。
AI(人工知能)への関心が高まった2016年。多くの企業がAI技術をビジネスに生かそうとしており、AIを活用した製品やサービスの発表が相次いでいる。しかしその一方で、AIに対する誤解も見られるようになっている。ガートナー ジャパンは12月22日、ガートナーの顧客の間で特に多く見られた10の誤解を発表した。
AIに対する誤解の延長線上には、近い将来AI領域において日本企業が“人材不足”で競争力が低下し、AIビジネスが行き詰まる可能性があるのだという。
10の誤解
- すごく賢いAIが既に存在する。
- IBM Watsonのようなものや機械学習、深層学習を導入すれば、誰でもすぐに「すごいこと」ができる。
- AIと呼ばれる単一のテクノロジが存在する。
- AIを導入するとすぐに効果が出る。
- 「教師なし学習」は教えなくてよいため「教師あり学習」よりも優れている。
- ディープ・ラーニングが最強である。
- アルゴリズムをコンピュータ言語のように選べる。
- 誰でもがすぐに使えるAIがある。
- AIとはソフトウェア技術である。
- 結局、AIは使い物にならないため意味がない。
「コグニティブ・テクノロジーのIBM Watsonが特殊な病名を見抜いた」「囲碁AIのAlpha Goが囲碁のトッププレイヤーに勝利した」というニュースが報じられたため、AIにそれほど詳しくない人は「AIが今、人間と同様のことができる」もしくは「今すぐにすごいことができる」と捉える傾向がある。しかしガートナーは、「遠い将来の話と、現在の話、数年後の話といったことを明確に分けて捉えるべきだ。企業は、SFの話と今の話を明確に分けておくことが重要」としている。
例えば、16年は「AIを活用したチャットボット」に注目が集まったが、その中の多くは「あらかじめ用意したテキストを条件に応じて返す」というレベルのものがほとんどだ。人が応対するのと同様のレベルに達するには、少なくとも10年以上かかるという。
AIの学習方法として深層学習 (ディープ・ラーニング)が脚光を浴びているが、こうした仕組みがあるAIを導入すればすぐに成果が出るというのも誤り。AIを活用するには、能力のあるエンジニアが必要だということも、多くの企業が見落としがちだ。
人材の問題で行き詰まる
ガートナーの展望によると、2019年までに60%の日本企業は新たなアルゴリズム開発や人工知能的なものにチャレンジするが、その80%がテクノロジーではなく、人材の問題で行き詰まるのだという。
AIの機械学習や深層学習の技術は、すぐに理解するのは難しく、ハイスキルを持つ人材の獲得競争が世界規模で起こっている。「機械学習エンジニアの給与の額が米国のおよそ半分という状況では、人材の確保が難しく、AIに関する企業の競争力は将来的に低下していく」とガートナー ジャパンリサーチ部門の亦賀忠明氏は分析している。
AIに対する期待が過熱している中でビジネスを成功させ、競争に打ち勝っていくためるには、「中長期的な戦略を立て、人材投資を行っていく」といった態度が求められている。
関連記事
- 人工知能と外国人に、私たちの仕事は奪われてしまうのか
人工知能によって、自分の仕事が奪われるかもしれない――。そんな不安を感じたことがある人も多いと思うが、実際のところどうなのか。このテーマを調査した、野村総合研究所の担当者に話を聞いた。 - AIビジネスの“カンブリア爆発”が始まる
2015〜2016年にかけて、AI(人工知能)は人間を超える「目」と人間並みの「耳」を持った――。目を持ったことでカンブリア紀に生物が爆発的に増えたように、AI搭載の製品やサービスもこれから爆発的に増えると考えられる。2017年以降、そのAIビジネスをけん引する企業とは……。 - 難関私大も「A判定」 受験AI「東ロボくん」の実力
国立情報学研究所が定例報告会を実施し、「東ロボくん」が受験した模試の結果を発表。 - 「渋滞予測」「異常検知」 2020年、テクノロジーは東京の安全をどう守るのか
近い将来、テクノロジーの進化によって、あらゆる“渋滞”をなくすことができるかもしれない――。いま、人(集団)の行動を分析して、渋滞や危険を予測する研究が進んでいる。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.