伊豆大島が「ゴジラ」に頼る、残念な思考:スピン経済の歩き方(7/7 ページ)
伊豆大島で「ゴジラ像」の設置計画が進んでいたが、住民の反対によって白紙撤回に。「ハコモノ」をつくりたがる自治体と、有効な税金の使い方を求める住民の対立はよくある話じゃないかと思われたかもしれないが、この騒動の本質はそこではない。何かというと……。
「観光資源」を発掘する仕事
そう考えていくと、2017年に間違いなく注目されるのは、客目線で各地域の「観光資源」を発掘する仕事だろう。「観光コンサルタント」でしょと思うかもしれないが、あの方たちは役所に雇われて、観光振興予算が目当てなので、どうしても「シン・ゴジラ、キテますよ」「お台場のガンダム像みたいのをつくればマスコミもきますよ」なんてハコモノ的な提案を行いがちだ。筆者が言いたいのは、役所から完全に独立した立場で、その地の観光業者が嫌がるような耳の痛い指摘をしていく覆面調査員(ミステリーショッパー)のようなものだ。
白紙撤回されたシン・ゴジラ像には、国から8000万円の地方創生加速化交付金が出ていたという。全国の市町村に1億円をバラまいた「ふるさと創生事業」で、そんな大金を何に使ったらいいのか分からない村長さんたちが、「純金のこけし像」なんかに1億円を注ぎ込んだ構図とほぼ変わらない。
日本全国に「観光資源発掘調査員」を送り込んで、「おらが村自慢」を徹底的に崩壊させる。成長戦略がサッパリだと叩かれている安倍さん、いかがでしょう。こっちのほうがよほど地方創生になりますぜ。
窪田順生氏のプロフィール:
テレビ情報番組制作、週刊誌記者、新聞記者、月刊誌編集者を経て現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌へ寄稿する傍ら、報道対策アドバイザーとしても活動。これまで100件以上の広報コンサルティングやメディアトレーニング(取材対応トレーニング)を行う。
著書は日本の政治や企業の広報戦略をテーマにした『スピンドクター "モミ消しのプロ"が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)など。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。
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