小さな会社の「台風発電」が、くるくる回る日:水曜インタビュー劇場(風車公演)(1/6 ページ)
「台風接近中」と聞くと、ほとんどの人が「建物の中でじっとしておこう」と思うはずだが、暴風を追い求めている人がいる。風力発電を開発しているチャレナジーの清水CEOだ。台風の強い風を使って、どのように発電するかというと……。
台風接近中――。このようなニュースを目にすると、多くの人は「早く家に帰らなければ」「外出を控えて、建物の中でじっとしておこう」といった行動をするだろう。強い雨・強い風から「逃れよう」とするはずなのに、台風を追い求めている男がいる。チャレナジーという会社を経営している清水敦史さんだ。
「なにそれ、ちょっとおかしいでしょ?」と思われたかもしれないが、清水さんは家の田んぼが気になるので様子を見に行っているわけではない。台風の暴風を利用して、発電機を回しているのだ。風を利用しているので「プロペラが付いた風車」を想像されたかと思うが、羽根はない。代わりにあるのは高さ3メートル、直径50センチの円筒3本だけ。風で円筒を回して、発電を試みているのだ。
多くの風力発電は風速25メートル以上になると、安全のために風車を自動的に停止する。それでも強風によって、巨大な羽根が破損する事故が起きている。羽根が付いている風車にとって強風は、いわば“天敵”になるわけだが、清水さんがつくっているモノは違う。強風を“味方”につけようとしているのだ。
どういう仕組みで、台風のチカラを利用しているのか。清水さんは「マグナス効果」に着目。暴風の中で円筒が回り始めると、円筒の左右で風の速さに差が発生する。この差によって円筒が回って発電するといった形だ。このように書いても「うーん、イメージできないなあ」という人もいるかもしれない。記者も、初めて聞いたときにはそうだった。分かりやすく言えば、野球のカーブボール、サッカーのバナナシュートの原理である。
詳細については後ほどご紹介するとして、チャレナジーは2016年に1キロワット機の試作機を開発し、沖縄県で実証実験を行い、発電に成功。2017年には「10キロワット機の開発を始める」(清水さん)という。こうした計画に期待して、国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のほかに、ファンドや個人投資家らが支援している。
このような話を聞くと、「フォローの風が吹いているなあ」という印象をもたれたかもしれないが、実はそうでもない。過去、大手企業も同じような仕組みに挑戦したことがあるが、なかなかうまくいっていない。また、チャレナジー自身も開発途中でどん底を経験する。そのような難しい技術なのに、従業員数人のベンチャー企業が成功する可能性はあるのだろうか。同社の清水さんに話を聞いた。聞き手は、ITmedia ビジネスオンラインの土肥義則。
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