「列車の動力」革新の時代へ:杉山淳一の「週刊鉄道経済」2017年新春特別編(4/5 ページ)
2017年3月ダイヤ改正は新幹線開業などの大きなトピックがない。しかし、今後の鉄道の将来を見据えると「蓄電池電車」の本格導入に注目だ。地方の非電化路線から気動車が消える。大都市の鉄道路線から架線が消える。そんな時代へのステップになるだろう。
新動力車の開発が進んでいる
JR西日本は2009年にキハ122系を使ったハイブリッド車両を試作していた。また、2014年9月から12月まで、紀勢本線で近畿車輛が開発した自己充電型蓄電池車両「Smart BEST」の営業運転を実施した。
Smart BESTは蓄電池電車に小型ディーゼル発電機を搭載し蓄電池に充電する。JR東日本のハイブリッド気動車と似ているけれど、ハイブリッド気動車は走行用電力として発電し、余剰電力を蓄電池に蓄えて再利用する。Smart BESTは蓄電池の容量不足の場合のみ発電する。このSmart BESTはJR西日本の山陰地区やJR四国でも試運転を実施している。
財団法人鉄道総合技術研究所は2006年に燃料電池試験車「クヤR291-1」の試験走行を実施した。燃料電池自動車は燃料充填施設の普及など課題が多い。鉄道の場合は車両基地などで効率的な重点施設運用ができ、軌道上を走る上、ATCなど安全装置もある。そうなると燃料電池は鉄道向きのシステムかもしれない。2008年には蓄電池搭載車両と連結した実験も行われている。
川崎重工はLRT向けに架線・蓄電池電車「SWIMO」を開発、2007年に完成させた。架線区間では給電走行と充電を行い、無架線区間では蓄電池の電力で走る。同様の車両は鉄道総合研究所も開発し、2007年に「LH02形(Hi-tram)」として完成。軌道(LRT)と鉄道の両方に対応しており、札幌市電、JR四国、万葉線(富山県)で試験運転を実施したという。
既にLRTの蓄電池電車は台湾・高雄市で実用化された。高雄市内を1周する約22キロメートルの高雄捷運環状軽軌だ。計画路線のうち、第1期線が2015年10月に開通し体験乗車会を開催。2016年7月に正式に開業。全線開業は2019年4月の予定だ。蓄電池電車システムはスペインのCAF(Construcciones y Auxiliar de Ferrocarriles)社が開発した。
日本では岡山電気軌道を擁する両備グループの代表、小嶋光信氏が2010年に「エコ公共交通大国おかやま構想」を提言。その中で、路面電車の架線レス化に言及している。路面電車の架線は設置や保守に手間がかかるし、都市の景観を損ねる。路面電車こそ蓄電池電車向きと言えそうだ。
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