電子書籍取次メディアドゥ、業界最大手を買収 80億円で:出版デジタル機構を子会社化
電子書籍取り次ぎのメディアドゥは2月28日、同業の出版デジタル機構を子会社化すると発表。70.52%の株式を産業革新機構から取得する。取得額は79億4000万円。市場シェアの2割を得ることに。
電子書籍取り次ぎのメディアドゥは2月28日、同業の出版デジタル機構を子会社化すると発表した。70.52%の株式を産業革新機構から取得する。取得額は79億4000万円。公正取引委員会の審査を受けた上で、3月末に株式譲渡を実行する。
メディアドゥは、13年に東証マザーズに上場、16年2月に東証1部への昇格を果たした。コミックに強く、「LINEマンガ」や「楽天マンガ」などをはじめとした大型電子ストアへの電子書籍取り次ぎが順調に推移。1月10日発表した17年2月期第3四半期の累計決算(16年3〜11月)は、売上高112億1900万円、営業利益4億3300万円。売上高は前年同期比37.4%増と、高い成長を見せている。1月末には集英社からの出資を受け、小学館、講談社、集英社という三大出版社を株主とした。
今回買収される出版デジタル機構は、13年に産業革新機構などの出資を得て設立。13年に凸版印刷系のビットウェイから事業譲渡を受け、電子取り次ぎ事業に進出した。アマゾンなどを含めた取引先を有し、文芸書や学術書などを中心としたテキストコンテンツに強みをもつ。16年3月期の売上高146億3600万円、営業利益6億2500万円と、成長率はメディアドゥよりは低いものの、業界最大手の立場にあった。
電子書籍取り次ぎの市場規模は1200億円程度とされており、今回の取引が成立すれば、メディアドゥは市場シェアの約2割を握り首位に立つことになる。メディアドゥは「これまで積み上げてきた両社の強みを合わせ、国内海外を問わず、『ひとつでも多くのコンテンツをひとりでも多くの人へ』届けられるよう、新たな電子書籍流通プラットフォームの構築を目指していく」としている。
メディアドゥの17年2月期第3四半期における純資産は25億9500万円。出版デジタル機構の普通株式の取得資金は、全額借り入れによる調達を予定しているという。
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