なぜ日本のおじさんは怒ると「責任者を呼べ!」と騒ぐのか:スピン経済の歩き方(2/5 ページ)
街中を歩いていて、おじさんが「責任者を出せ!」と騒いでいるのを聞いたことはないだろうか。例えば、駅員に大声を出したり、コンビニの店員を叱ったり、とにかく日本のおじさんはよく怒っている。なぜおじさんは「責任者を呼べ!」と叫ぶのか、その背景を調べてみると……。
なぜ「玉砕」的な手法をとるのか
本件で、責任者を呼んだところで事態が改善しないのは明らかだ。むしろ、施設の防火安全管理の責任者に対して、「オレは安全を脅かす行為をしたぞ」と自分から白状をするわけだから、立場をより苦しいものにしている。にもかかわらず、なぜこういう「玉砕」的な手法をとったのか。
歳をとると頑固になんだよ、という意見もあろうが、だったら目の前にいる人間に頑なに謝罪を求めていけばいい。頭に血がのぼってしまうと損得抜きの脊髄反射で、「責任者を呼べ!」と口走ってしまうのは、理性を超えた潜在意識の部分にこの言葉が刷り込まれている気がしてならないのだ。
そう感じるのは、50〜60代のおじさんたちがまだナウなヤングだった時代、日本ではやたらと「責任者を呼べ!」的な言葉が強く印象づけられる事件報道が続発したことが大きい。
その代表が、1985年に日本中を震撼(しんかん)させた豊田商事の永野一男会長刺殺事件である。
覚えている方も多いと思うが当時、豊田商事は悪徳商法が問題になっていた。そんななかで、被害者である元部下たちの声をうけた自称・右翼の男2人が「永野会長を出せ」と自宅に押しかけ、会長を刺し殺してしまうのだ。
その衝撃も冷めやらぬ翌86年9月にも、日本刀を持った右翼団体メンバー5人が日本教育会館内にある日教組の共済生協事務局で立てこもって「責任者を出せ!」と訴えた。さらにその翌年の87年9月には、東京・杉並区の不動産会社社長宅に拳銃を持った男が侵入、お手伝いさんを人質に立てこもり、「責任者を出せ!」と要求。お手伝いさんを銃殺するといういたましい事件だった。
また、1991年8月には野村証券本社にも右翼団体の構成員2人が拳銃を持って乱入、人質をとって立てこもっている。彼らの要求もやはり「社長を出せ!」だった。
関連記事
- なぜ研修にチカラを入れている会社は、パッとしないのか
上司から「研修があるから受けてきてね」と言われたことがある人もいるはず。ビジネスシーンでよくある光景だが、グーグルで人材開発を担当してきたピョートルさんに言わせると、こうした会社は「イケていない可能性がある」という。なぜかというと……。 - パワハラがなければテレビが成立しない理由
ダウンタウンの松本人志さんが、「パワハラは必要悪」と発言したことが物議を醸している。この発言に対して、筆者の窪田氏は「『テレビ』の本質をズバッと言い当てている」という。どういう意味かというと……。 - 日本のおじさんたちが、「アデランス」をかぶらなくなったワケ
アデランスがMBOを実施すると発表した。投資ファンドからの支援を受けながら経営再建を目指していくそうだが、業績低迷の背景に一体何があったのか。日本のおじさんたちが「かつら」をかぶらなくなった……!? - 「石原さとみの眉が細くなったら日本は危ない」は本当か
女優・石原さとみさんの眉がどんどん細くなっている。彼女のファンからは「そんなのどーでもいいことでしょ」といった声が飛んできそうだが、筆者の窪田さんは「日本経済にとって深刻な事態」という。なぜなら……。 - 「着物業界」が衰退したのはなぜか? 「伝統と書いてボッタクリと読む」世界
訪日観光客の間で「着物」がブームとなっている。売り上げが低迷している着物業界にとっては千載一遇かもしれないが、浮かれていられない「不都合な真実」があるのではないだろうか。それは……。 - 電通や東芝といった大企業が、「軍隊化」してしまうワケ
電通の女性新入社員が「過労自殺」したことを受け、「オレの時代はもっと大変だった。いまの若い者は我慢が足りない」と思った人もいるだろう。上の世代にとっては“常識”かもしれないが、なぜそのような考え方をしてしまうのか。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.