「少年の顔」を報じて何の意味があるのか WBCの捕球騒動:赤坂8丁目発 スポーツ246(1/4 ページ)
WBCの日本VS.キューバ戦でハプニングが起きた。ホームラン性の打球をキャッチした少年の顔写真が、複数の新聞社で報じられたのだ。ボールをキャッチしたことは許されることではないが、顔写真を報じる必要があったのか。米国の場合は……。
臼北信行(うすきた・のぶゆき)氏のプロフィール:
国内プロ野球、メジャーリーグを中心に取材活動を続けているスポーツライター。セ・パ各12球団の主力選手や米国で活躍するメジャーリーガーにこれまで何度も「体当たり」でコメントを引き出し、独自ネタを収集することをモットーとしている。
野球以外にもサッカーや格闘技、アマチュアスポーツを含めさまざまなジャンルのスポーツ取材歴があり、WBC(2006年第1回から2013年第3回まで全大会)やサッカーW杯(1998年・フランス、2002年・日韓共催、2006年・ドイツ)、五輪(2004年アテネ、2008年北京)など数々の国際大会の取材現場へも頻繁に足を運んでいる。
野球日本代表・侍ジャパンが熱い戦いを繰り広げている。野球の国・地域別対抗戦「第4回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)」でキューバ、オーストラリアを下し、開幕2連勝。3月10日の中国戦を待たずに2次リーグ進出を決めた。TBS系列が放送した生中継はキューバ戦が平均22.2%、オーストラリア戦が平均21.2%(いずれもビデオリサーチ調べ、関東地区)と好視聴率をマーク。高い関心ぶりがうかがえる。
さて、そのWBCの日本VS.キューバ戦(7日・東京ドーム)でハプニングが起こったことはすでにご存じの通り。1ー1の同点で迎えた4回二死二塁の場面で打席に立った1番・山田哲人内野手(ヤクルト)が左翼スタンドへ向け、弧を描くように大きな飛球を放った。勝ち越し2ランと思われたが、山田は二塁を回ったところで審判に止められてしまう。少年ファンが左翼席のフェンス越しからグラブを差し出し、スタンドインする直前に打球をダイレクトで捕球。この模様がビデオ映像によるリプレー検証でも確認されると審判団の協議の結果、二塁打となってしまった。
少年ファンは“ナイスキャッチ”できてものすごく嬉しかったのだろう。その直後にボールを片手にしながら記念撮影した写真をTwitterに掲載したが、これが多くのネットユーザーたちの怒りを買い、大きな墓穴を掘る形になった。すぐさま写真を投稿した人物のアカウントは削除されたものの、時すでに遅しで写真はあっと言う間に拡散。少年ファンとおぼしき人物が某少年野球チームに在籍しているとの詳細な情報や写真、さらには現住所までもが「特定」として書き込まれた。
捕球騒動が起きてからほんの数十分後の出来事だった。重大な罪を犯したわけでもあるまいし、さすがにこれはいくらなんでもやり過ぎだろう。明らかに面白おかしく個人情報まで暴くことは、まさに「サイバー暴力」だ。
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