不振だった「USJ」が急成長できた理由:長浜淳之介のトレンドアンテナ(4/4 ページ)
ハリウッド映画のテーマパークとして、2001年に誕生した「USJ」。14年には過去最高の来場者数1200万人を突破し、15年には東京ディズニーシーを抜いて1390万人を記録した。それまで不振だったUSJはなぜV字回復できたのか。
森岡氏が示した勝ちパターンを維持できるか
また、本格的に資金を投入すべき場所には、惜しげもなく投資するのも森岡氏の手法の1つ。典型的な例が、「ウィザーディング・ワールド・オブ・ハリーポッター」と呼ばれるハリーポッターエリアだ。これには450億円が投じられ、14年7月に新設されている。ハリーポッターエリアが造られるのは、米国オーランドのUSJに続いて世界でも2番目。
10年にオーランドを視察した森岡氏は、日本で成功すると確信。猛反対する他の幹部を説得して、オープンにこぎ着けた。当時800億円の年商であったUSJには不相応の巨額な建設だったが、次々と施策を当ててきた森岡氏だからこそ押し切ることができた。ハリーポッターエリアのオープン後は、関西とそれ以外の顧客の構成比が逆転し、日本全国のみならず、海外からの観光客も増えて、世界のUSJに飛躍した。
ハリーポッターエリアは細部まで作り込んだリアルさが特徴的で、映画のセットのように英国の古い町並みや、古城のホグワーツ城などを再現している。生えている樹木も英国さながら、おみやげ用のつえや蛙チョコレート、百味ビーンズ、バタービールなど魔法界のお菓子、飲み物もリアルに再現させた。
空を飛ぶようなライド・アトラクション、つえを振って魔法を掛けられる体験などもあり、入場者が魔法使いの気分になってハリーポッターの世界を満喫できる、万人受けするエンターテイメントとなっている。
「スーパーマリオ」など任天堂のキャラクターとその世界観をテーマとした「SUPER NINTENDO WORLD」は現在建設中で、500億円を投じる計画。2020年の東京オリンピックの前にオープンする予定だ。外国人観光客のインバウンド消費にも大きく貢献するだろう。
日本発のキャラクターを使った「クールジャパン企画」は、2015年から毎年取り組んでいるテーマで、今年もゴジラ、エヴァンゲリオンなどの日本発キャラクターがアトラクションとなっている。任天堂エリアはその集大成となる施設となる。
同社は「親しみやすいキャラクターによるファミリー向けアトラクションと、ハロウィーン・ホラーナイトのような若い女性向けのストレスを発散できるアトラクション。この両輪戦略で、今後も成長していきたい」としている。
著者プロフィール
長浜淳之介(ながはま・じゅんのすけ)
兵庫県出身。同志社大学法学部卒業。業界紙記者、ビジネス雑誌編集者を経て、角川春樹事務所編集者より1997年にフリーとなる。ビジネス、IT、飲食、流通、歴史、街歩き、サブカルなど多彩な方面で、執筆、編集を行っている。共著に『図解ICタグビジネスのすべて』(日本能率協会マネジメントセンター)など。
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