「仕事をさせない仕組み」で強い企業をつくる:人件費1億5000万円削減(1/2 ページ)
57時間もあった月の平均残業時間を2年で24時間以下に減らし、1億5000万円もの人件費削減に成功した武蔵野。なぜ短期間で成果を挙げることができたのか。
売り上げを伸ばしながら残業時間も削減――。「働き方改革」でこうした成果を挙げている企業の実例はまだまだ少ないのが現状だ。そうした中、顕著な成果を挙げているのが経営コンサルティング事業などを手掛ける武蔵野(従業員数760人)だ。
同社は、3年前に57時間もあった月の平均残業時間を2年で20時間以下に減らし、1億5000万円もの人件費削減に成功した。また、残業時間を減らしながらも売り上げは伸ばし続け、2016年度は過去最高益(5億円)を更新している。
なぜ同社は短期間で成果を挙げることができたのか。
ツールの導入だけでは意味がない
武蔵野が残業時間の削減に取り組んだのは2014年。それまでは「残業をすることは当たり前だし、仕方ない」という考えが全社的にあったそうだが、コスト抑制や生産性の向上といった観点からも同社の小山社長は思い切って約数億円を投資し、まずタブレットの全社導入を決めた。
ここで多くの企業と異なるのが、タブレットを業務ツールとしての配布だけでなく、“私用目的”でも使ってもらうようにしたことだ。
小山社長はその狙いについて「導入してもきちんと活用してくれなければ意味がない。まずは『遊び』で使ってもらい慣れてもらうことが先決だった。私用目的なら積極的に使ってくれるし、便利さを理解してくれる」と話す。
「当社には20〜70代までの幅広い世代の社員がいる。ツールを導入しても、結局従来のやり方のまま――という社員も少なくない。しかし、一部の社員しか有効活用できないようではムダ金になってしまう。導入して終わりではなく、全員がきちんと使いこなせる工夫が必要」(小山社長)
その後は、業務アプリケーションを活用するための勉強会を定期的に開催。こうしたサポートのおかげで、ITリテラシーが高くない社員でも早い段階で使いこなせるようになったという。
全社員のうち大部分を占める外回りの営業社員は、現場にいながら稟議の承認や日報の提出といった各業務プロセスを全てタブレット上で済ませられるようになったため、業務効率を大幅に改善した。
例えば、これまで営業社員は納品伝票を持って営業先に出かけ、営業活動を終えると事務所に戻り、納品伝票に記入した内容をもとにデータを打ち込むという精算業務が待っていた。月末はこれに棚卸作業も加わるため、深夜に退社することも多かったという。
タブレット上で精算できるシステムを導入したことで、出先から専用アプリにデータを打ち込むだけで精算ができるようになったほか、事務所に戻る必要もなくなり直帰が可能になったので、移動時間の削減にもつながった。
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