「仕事をさせない仕組み」で強い企業をつくる:人件費1億5000万円削減(2/2 ページ)
57時間もあった月の平均残業時間を2年で24時間以下に減らし、1億5000万円もの人件費削減に成功した武蔵野。なぜ短期間で成果を挙げることができたのか。
「残業なし」でボーナスアップ
残業時間の削減に取り組む企業が増えてきている一方、仕事が終わらないためにサービス残業を助長してしまっているケースも少なくない。武蔵野では「仕事をさせない仕組み」を作り上げて対応している。
例えば、午後9時15分〜午前4時の時間は、社内ネットワークにアクセスができないよう制限を設けたほか、会社支給の端末(ローカル)に各種データを落とせない(ダウンロードできない)ようにしているため、家に持ち帰って仕事をすることができない。
このほかにも、同社では全営業所にモニタリングカメラを設置し、社員が残業をしていないかを上司がタブレット上でチェックできる仕組みを構築。社内ネットワークへのアクセスが不要な業務だったとしても、会社に残れないようにした。
業務時間を過ぎても営業所にいる場合は反省文を提出させるほか、改善が見られない場合は給料を減すというルールもつくった。「給料を減らされてまで働きたい人はいないので、残業をする人は一気にいなくなった」(小山社長)という。
「就業時間との勝負なので、全員が本気で工夫して効率よく働くようになる。残業ができる環境だとついダラダラと仕事をしてしまうが、時間が限られていると分かれば集中して仕事に挑んでくれるので、多くの社員が質の高い仕事をしてくれるようになった」(同)
また、「残業時間ゼロ」の社員にはボーナスを30%アップさせる仕組みも導入した。残業による人件費をカットできた分をこうしたインセンティブに回しているのだ。
「小遣い(残業代)を稼ぎたいがために残業をする人は多い。しかし、早く帰れば得をする仕組みをつくることで、その意識・常識を変えることができる」(同)
「残業時間ゼロ」の会社が生き残る
近年は多くの産業で人手不足が深刻化し、人材の確保が大きな課題となっている。小山社長は人手不足(採用難)で苦しむ企業こそ「残業時間を減らすこと」でその課題を解決できると話す。
「いまの20代は給料よりも『自分の時間』を求めている。採用難のこの時代、『早く家に帰れる会社』に生まれ変わらなければ人材を集めることはできない」(同)
改革前の武蔵野は、新卒社員の約半数が3年以内に離職してしまうことが当たり前だった。しかし、改革後に入社した新卒社員は現在1人も離職しておらず、また人材も集まりやすくなったという。
また、夜遅くに仕事をすることがなくなったため、会社内(部署内・部署外)での飲み会が激増。社内コミュニケーションが活性化したことで社員のモチベーションも向上し、離職率の抑制にも効果を発揮しているそうだ。
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