東武鉄道は「つながり」を大切にしている会社だ、と思える事例:弱点を克服し、利用者に恩恵(1/3 ページ)
「つながり」の力はビジネスでも、実社会で生きる上でも大事だとよくいわれる。その意味では、東武鉄道ほど「つながり」を大切にする鉄道会社は、なかなかないのではないだろうか。このつながりが、東武の弱点を克服するだけではなく、多くの利用者にも恩恵をもたらしている。
東武鉄道のターミナルといえば、伊勢崎線……最近では、スカイツリーラインと呼ぶことも多い浅草駅と、東上線の池袋駅である。
浅草駅は、ターミナルとしてはちょっと弱い、と思えるところがある。駅自体が狭く、長い編成の列車が、入れないようになっている。普段は、6両編成の普通列車と、やはり6両編成の特急列車を中心に使用されている。なお、朝の時間帯には区間急行もある。
北千住方面からやってきた6両の普通列車が、およそ10分に1本程度入線する。このほかに、特急がやってくる。もちろんそれだけで、旺盛な需要をさばいているわけではない。
関東私鉄最長の複々線
北千住から北越谷までの間には、JR以外の私鉄では最長距離の複々線がある。この複々線を走行する列車をみると、普通列車の緩行線は東京メトロ日比谷線、区間準急以上の急行線は東京メトロ半蔵門線が、それぞれ走っている。つまり、都心からやってくる人たちを、途中から合流させているといえる。もしくは、運びきれない伊勢崎線沿線の住民を、東京メトロに協力してもらって、都心に送り込んでいるとも考えられる。他社の力を借りて、通勤輸送の円滑化に力を入れているのだ。
北千住から、という複々線の区間設定に、何か感じるものはないだろうか。それは、都市交通の全体性を考えて、自社で運ぶ利益を削ってでも人々を都心に送り込むという、目的を果たそうとすることだ。
東京メトロ半蔵門線と東武伊勢崎線の直通運転が始まったのは、2003年と意外と最近のことである。それまでは、現在はとうきょうスカイツリーと名前を変えてしまった業平橋まで10両編成の列車が使用され、乗客はそこで降りて押上まで歩いてもらっていた。ただ、半蔵門線との直通運転の開始によって、現在は直通の便が走っている。
さまざまな方向から直通してくる列車を伊勢崎線にまとめ上げるために、複々線は大きな役割を果たしている。なお、半蔵門線は、東急田園都市線に直通している。
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