安倍夫人はやっぱり「珍しい存在」、これだけの理由:世界を読み解くニュース・サロン(3/5 ページ)
森友学園のスキャンダルが世間を騒がせている。学園の名誉校長に就任した昭恵夫人にスポットが当たっているが、海外メディアは彼女のことをどのように報じているのか。これまでの歴代夫人と違って、「珍しい存在」として取り上げられているが……。
首相の妻という立場で商売を行う
また2016年の米ブルームバーグへのインタビューでは、「I want to pick up and pass on the views that don't get through to my husband or his circle.(夫や彼の仲間たちに伝わらない見解を拾って伝えたい)」と述べたり、さらには、医療マリファナを全面的に禁止するのが正しいのかどうかと、これまた物議を醸すような問題に疑問を呈している。
それ以外でも、夫が推進しているのにもかかわらず、TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)に反対したり、東日本大震災被災地の防潮堤建設にも反対する発言をしている。
彼女の主義主張にものを申すつもりはないが、首相である夫が「私人である」と強調しているファーストレディとしては、かなり踏み込んだ発言だと言っていい。また自分の考え方を夫に訴えているようなニュアンスもアピールしている。米ワシントンポスト紙は2014年に、昭恵夫人が安倍首相の政策の逆張りをすることで、名門出の右派で頑固な保守といった安倍首相のイメージを“中和”しているという日本人学者のコメントを紹介している。どれほどの国民がこの意見に同意するのかは疑問である。
言うまでもなく、海外に目をやれば、政治的なメッセージ性を含んだ活動に参加するファーストレディは少なくない。ただ多くの場合、選挙で選ばれた夫の仕事を邪魔しないように、女性や子ども、または社会的弱者のための権利向上といった批判の起こりにくいテーマに絞られている。国家のエネルギー政策に口出しするファーストレディは、著者が記憶する限り、聞いたことがない。
彼女を「珍しい」ファーストレディにしている理由は他にもある。首相の妻という立場で商売を行なっていることだ。
昭恵夫人は居酒屋を経営しているが、これについても欧米メディアが取り上げている。ただ海外では、ファーストレディが「居酒屋(海外メディアは"izakaya"と呼んでいる)」を経営するのは考えられない。昭恵氏の居酒屋は、ネットやメディアでの報道を見ると、明らかに「ファーストレディ」がやっている店として喧伝(けんでん)されている。昭恵夫人は首相の夫人となってからこの店をオープンしており、首相の妻という知名度で金もうけをしているのである。
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