ミズノの作業用シューズが、実は売れている:新連載・あの会社のこの商品(4/4 ページ)
現場の作業者などが作業中に履くプロテクティブスニーカーを、ミズノが発売したところ、当初計画を上回る売れ行きを示している。意外とも思えるヒット商品は、どのようにして誕生したのか?
バッグやインナーなどにも進出予定
好調さを受けて、ラインアップの拡大も進んでいる。2016年11月に足首をサポートするミッドカットタイプを追加し、2017年3月には「オールマイティ LS」を発売した。
オールマイティ LSの特徴は、軽くなったこと。オールマイティに比べ約35グラムの軽量化に成功した。また、トウと甲を同色にしたほか、ひもを通すシューホールのデザインをギザギザにし曲がりやすくしたことで、走り出せそうなランニングスタイル風に仕上げた。
なぜ軽量化にこだわったのか。それは、作業現場で働く人を対象にワーキングシューズに関する調査を実施したところ、購買時にこだわるポイントの1位が「軽さ」だったため。そこで、オールマイティを徹底的に見直し、軽量モデルを追加した。
オールマイティから大きく変わったところは、ソールのデザインとトウの補強。ソールは屈曲性と耐久性、グリップ力を担保しながら軽量化を実現するべく、新たなパターンを採用。ブロックの配置や数などを見直した。トウの補強については、ラバーよりも軽い人工皮革に変更。通常の人工皮革よりも耐摩耗性に優れたモノを使ったが、これはトウを擦ることが多い野球シューズなどに用いられるものを使った。
ミズノは今後、ワーキング分野の商品を積極的に展開していく考え。ワーキングシューズについては特定の職種に向けたモデルの開発を進めているほか、特定の機能を高めたモノを発売したいという。「ワーキングビジネスを成長させるには、特定の職種に特化した商品を発売しないと厳しいです」と稲岡氏は明かす。
また、シューズ以外にバッグ、インナー、サポーターなどといったアイテムの発売も検討している。同社がこれまでスポーツ用品の開発で培ってきたノウハウは、新たにワーキング分野で生かされ花開こうとしている。
著者プロフィール:
大澤裕司(おおさわ・ゆうじ)
フリーランスライター。1969年生まれ。月刊誌の編集などを経て、2005年に独立してフリーに。工場にまつわること全般、商品開発、技術開発、IT(主に基幹系システム、製造業向けITツール)、中小企業、などをテーマに、雑誌やWebサイトなどで執筆活動を行なっている。著書に『これがドクソー企業だ』(発明推進協会)がある。
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