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なぜコロワイドは「かっぱ寿司」を買ってしまったのか新連載・外食戦争の舞台裏(2/4 ページ)

かっぱ寿司の経営不振が続けば、コロワイドの屋台骨が揺るぎかねない状況だ。なぜコロワイドは「買収するメリットよりはリスクの方が大きい」(関係者)かっぱ寿司を買ってしまったのだろうか。

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M&A戦略による事業再生がコロワイドの成功モデル

 コロワイドはもともと甘味処(甘い味の菓子を出す飲食店)だった。蔵人会長が77年に居酒屋業界に進出し、手作り居酒屋「甘太郎」を開業。80年代からチェーン展開を本格化させた。もうけを新店舗に再投資、また出店する地域にセントラルキッチンを設置し、食材調達から食材加工、商品開発などを川上から川下まで一貫して行うマーチャンダイジング(MD)を志向した。

 コロワイドは99年に株式店頭公開(現ジャスダック)、00年に東証2部上場、02年に1部に昇格した。コロワイドが急成長のきっかけをつかむのは02年に、居酒屋「北海道」などを展開する平成フードサービスを買収し連結子会社化してからだ。この後、コロワイドはM&A戦略を駆使し、現在までに計17回の買収劇を実現してきた。コロワイドの歴史はM&A戦略と、連結子会社化、会社の商号変更の歴史だといっても過言ではない。コロワイドの成功はM&A戦略による企業再生のビジネスモデルを構築したところにある。

 現在、コロワイド傘下の主要事業会社はコロワイドMD、アトム、レインズインターナショナル、カッパ・クリエイトの4社である。ちなみに直営店舗数は1517店舗、FC店舗を含めた総店舗数は2740店舗を数える。売上高は2350億円(2017年3月期通期連結業績予想)で、外食企業の売上高ランキングでゼンショーホールディングス、すかいらーくに次ぎ、第3位に位置する。

photo これまでのM&A・売上推移(出典:コロワイド公式サイト)

 コロワイドの蔵人会長は時代の変化に敏感な経営者だ。5年頃から「祖業である居酒屋事業の将来は暗い」と非居酒屋事業にカジを切ってきた。12年に「牛角」などを展開するレインズインターナショナルを買収して、面目を一新した。この頃から都市部の同一エリア内の飲食ビルを一棟借りし、3〜5業態を出店する「多業態ドミナント戦略」を展開、1カ所で顧客のさまざまなニーズに応える「総合外食産業」を打ち出した。

 さて、蔵人会長の最も優れた点は、M&A戦略で買収したチェーン本部とコロワイド本部との「一体化」を進めるのがうまかったことだ。コロワイドは買収した会社のチェーン本部を例外なく、本社が入居する横浜ランドマークタワーに集め、親会社、子会社また新卒、中途入社、学歴など差別なく大部屋で一緒に仕事をさせた。とにかく寄り合い所帯で、新卒、中途社員などさまざまな社風にもまれてきた人たちが一カ所に集まって仕事をする。

 コロワイドでは「実力主義」「信賞必罰」「被買収社員との差別なし」といった経営方針で経営の求心力は保った。蔵人会長は実績を上げれば被買収会社の社員でも出世させた。そのため30〜40代で事業本部長や社長に就くケースもあって、人事は活性化していた。蔵人会長は「同じ釜の飯を食う仲間」としての意識を植え付けて、「全社員の一体化」を図ったことが企業再生の成功につながってきた。

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