AIも活用 運輸業界のデジタル変革を目指す協議会:中小企業の支援になるか
2016年8月に発足した運輸デジタルビジネス協議会は、運輸業界が抱えるさまざまなビジネス課題をデジタルテクノロジーによって解決することを目指している。
ビッグデータやAI(人工知能)の活用などによって運輸業界の課題解決を目指す運輸デジタルビジネス協議会が4月20日、メディア向けに活動内容を説明した。業界内での先進的な取り組みやノウハウなどを参画企業同士が共有できる仕組みを作ることで、とりわけ資金力の乏しい中小企業を支援したい考えだ。
同協議会は2016年8月に設立。タクシーやトラックをはじめとする運輸業界と、ICTなど多様な業種のサポート企業が連携し、デジタルテクノロジーを利用することで運輸業界を安心・安全かつエコロジーに変革することを目的とする。現在の会員数は32社で、うち9社が運輸事業者。幹事長は愛知県名古屋市に本社を置くタクシー会社・フジタクシーグループの梅村尚史社長、議長は帳票システムなどを開発するウイングアーク1stの内野弘幸CEOが務める。
協議会設立の背景として、梅村社長はタクシー業界におけるICT活用の遅れを訴える。タクシー業界は中小企業が多く、彼らはIT投資する潤沢な資金がない。フジタクシーでも6年ほど前からスマートフォンを使った配車サービスを提供しているが、そのシステム開発、運用には少なくないコストがかかってしまうのが悩みだという。協議会で標準ソリューションを作ることで、小規模事業者でも利用できるような低価格サービスを実現したいとする。
また、タクシーを含めた運輸業界全体の安心・安全対策の強化も図る。ドライブレコーダーの映像や走行情報、さらには過去の事故データなど、各種データを分析して事故防止に取り組む企業は増えているものの、「1社のデータを分析するだけでは分からない。(多くの企業のデータを集約した)ビッグデータを活用することで安心・安全にかかわる課題を解決できると思う」と梅村社長は強調する。協議会では今後、そうした映像データの分析において、AIを活用して効率化を進めたい考えだ。
安全対策の一環として、ドライバーの健康促進にも協議会は取り組んでいく。厚生労働省の調査によると、業務の影響で腰痛や熱中症、脳血管疾患、心臓疾患などが発生した人は、他の業界と比べて運輸業に多いことが分かっている。そこでドライバーの健康と生活習慣に関するアンケートを実施したり、着衣型生体センサーで眠気を検知するような実証実験を行ったりしている。
「運輸業界全体で課題解決に取り組むことで、自社だけではなかなか対策が難しい中小企業でも安心・安全なサービスを提供できるようになる」と梅村社長は意気込んだ。
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