解決してきたから、「アンメルツ」は選ばれ続けた:ロングセラーを読み解く(3/3 ページ)
2016年、販売から50周年を迎えた小林製薬の肩こり薬「アンメルツ」シリーズ。現在同シリーズの販売本数はシリーズ累計で2億本を超えている。なぜ売れ続けているのか。「アンメルツ」シリーズの軌跡をたどりながらその理由を探る。
なぜ、トップシェアを守り続けることができるのか。
アンメルツシリーズは50年間、改良を重ねながら合計で11品目を発売。肩こり薬(塗り薬)市場のおけるトップシェアを守り続けてきた。
「シェアで1位だったとしても現状に満足せず、常に使い勝手を追求し、改良を続けてきたことがロングセラーにつながったのだと思います」(小林製薬)
改良する上では「使い勝手の追求」という軸をこれまで一度も変えてこなかった。長年、そのアンメルツの特性(コンセプト)がブレなかったことも、ユーザーのからの厚い信頼につながっているのだろう。
また、小林製薬は「常に“ファーストイン”という考え方を実践してきました」と説明する。
「どのジャンルにもカテゴライズされていない、今までにないタイプのものを一番早く出すことです。そうすればマーケットリーダーになれますし、新規性の強い商品は注目されやすいので、販促費用も比較的少なくて済みます。結果、利益率も高くなります」
既に市場から受け入れられている製品の後追いではなく、“今までにないタイプ”のモノを開発することで、新しい市場の主導権を取るのだ。当然その分リスクも大きい。実際、アンメルツシリーズの中には2〜3年で消えてしまった商品もいくつかある。
例えば、12年発売の「アンメルツゴールドEXグリグリ」。先端(湿布部)に小さな鉄球を埋め込み、「マッサージをしながら液体を塗り込む」というコンセプトで発売した。しかし、鉄球のコストが高く、販売価格を高めの設定にせざるを得なかったためユーザーに受け入れられず、わずか4年で生産中止となった。
「失敗に終わった商品はたくさんあります。それでも、マーケットリーダーであり続けるために、今後もファーストインに、こだわり続けます」
新商品の「アンメルツNEOロング」では肩こりに悩む人は背中全体のこりにも悩んでいることに着目。肩甲骨の真ん中まで届くロングサイズのボトルを業界で初めて開発した。これもまさにファーストインの挑戦である。
今後の目標について「塗り薬市場におけるアンメルツのシェアは現在26%(シェア第2位のバンテリンコーワは18%)。将来的には40%近くまでシェアを拡大していきたい」としている。
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