それでも利益率が高い「磯丸水産」のカラクリ:長浜淳之介のトレンドアンテナ(1/2 ページ)
居酒屋市場が伸び悩む中、首都圏を中心に店舗数を伸ばし続けている海鮮居酒屋「磯丸水産」。多くの飲食店が深夜営業を取りやめる中、磯丸水産は24時間営業で成功している。その理由とは。
居酒屋市場が伸び悩む中、首都圏を中心に店舗数を伸ばし続けている海鮮居酒屋「磯丸水産」。運営会社のSFPダイニングが吉祥寺に1号店を出店したのは、2009年2月。「駅前立地」「24時間営業」「バーベキュースタイル」「ランチメニュー(海鮮丼)」などの要素が受けて勝ち残り、2016年12月時点で磯丸水産の店舗数は153店にまで拡大している。
商品を安く提供できる仕組み
磯丸水産の店舗の多くは出店コストの高い駅前で、1階の路面店に大々的に看板を掲げて夜遠くからでも目立つように煌々と明りをともす。このやり方は、コストをできるだけ下げたい今の居酒屋の趨勢に逆行するものだ。
しかし、そのデメリットを補って利益を生み出すのが、浜焼きをメインにした商品戦略である。磯丸水産の経常利益率は12%と、居酒屋チェーンの平均が2%台(帝国データバンク調べ)とされる中では、破格に高い。
卓上コンロで魚介を焼くバーベキュー、浜焼きはあたかも海の家に来たかような店内の雰囲気とマッチしており、都会の中での非日常感があって、場が盛り上がると好評だ。しかも、セルフで客が調理するので、調理担当の人件費を節約でき、食材を安く提供できるメリットがある。磯丸水産の顧客単価は3000円程度。
メニューに関しては、名物の「蟹味噌甲羅焼」に匹敵するヒットが欲しいところだが、宴会メニューは新しく2500円から2時間飲み放題付きのコースを設けるなど、安さをアピールしている。
また、毎日仕入れる新鮮な魚介は、同社の佐藤誠社長自らと購買部員が全国の漁港へと足を運び、これぞという旬のものを直送している。中間流通が省かれているので、安く仕入れることができる。
青森県八戸市の前沖さば、宮城県石巻市の三陸帆立、鳥取県境港名物の天然甘海老、三重県答志島の小女子(こうなご)――などといった、地域の特産を多数そろえ、季節限定品や、日替わり品も魅力だ。
店内に生簀を設置して、適正な温度や水質の管理を行うノウハウを有しているのも強みとなっている。水槽で泳いでいる魚をその場でさばくので、見た目にも鮮度の違いが明確に分かる。
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