「塩熱飴」がケタ違いに売れた秘密:あの会社のこの商品(2/4 ページ)
夏になったら怖いのが熱中症。汗で失われた電解質を補給するのに使いたいのが、塩分補給ができる飴である。このタイプの飴が広く普及するきっかけをつくったのは、ミドリ安全のヒット商品「塩熱飴」であった。
塩熱飴は嗜好品ではない
塩熱飴は電解質を補給するための飴なので、ナトリウムやカリウム、マグネシウムなどは必要量を配合することになるが、栄養バランスを考え、ビタミン類も配合することにした。五洲薬品が持つノウハウを生かしながら、栄養バランスを決めていった。
しかし、「塩味はなめ続けるのがかなり辛い」と安田氏。そこでクエン酸を加え、味もレモンにした。飽きの来ない味にすることで、最後までなめ続けることができるように工夫した。
ただ悩ましかったのが、嗜好(しこう)品とは位置付けしにくいこと。塩熱飴は夏になったら毎日摂取する、いわば薬のようなもので、おいしいからといって立て続けに摂取するものでもない。「良薬口に苦し」ではないが、「効きそうだ」と感じてもらえるようにすることも必要だった。
塩熱飴を嗜好品とは明確に分けることにしたのは、オーナーである松村不二夫社長の意向。フレーバーをレモンのみにしたのも、嗜好品と位置付けないためであった。これにより、フレーバーは長らく、レモンだけで展開することとした。
初年度は飛ぶように売れ、50トン生産
こうして塩熱飴は完成する。自社ブランドでは初の食品だったこともあり、「お客さまがどう評価するか分からなかった」と安田氏。そのため、生産も慎重で、最初の生産指示は500キログラムと控え目だった。
しかし、心配は杞憂(きゆう)に終わる。発売したところ、飛ぶように売れていった。追加の生産指示が1トン、2トンと徐々に増え、2008年度の生産量は実に50トンに達した。飴は年間2トン生産すれば「売れている」と言われているので、塩熱飴の売れ行きがいかにケタ違いなものだったかが理解できよう。
それにしても、ミドリ安全はなぜ、これほど売ることができたのか? その理由は営業スタイルにあった。同社の営業は基本的に、企業への直販。全国各地に配属された営業マンが、顧客企業に直接、塩熱飴を売って歩いた。安全靴やヘルメットなどの販売を通じて、エンドユーザーとつながっていたことから、できたことであった。
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