三菱自、最終赤字2000億円 燃費問題響く:V字回復目指す
三菱自動車の2017年3月期連結決算は、純損益が1985億円の赤字。燃費データ不正問題の影響が大きかった。今期はASEANや中国、日本の販売強化に加え、日産自動車とのアライアンスによる経営改善で回復を目指す。
三菱自動車が5月9日発表した2017年3月期連結決算は、純損益が1985億円の赤字だった。燃費データ不正問題で国内販売が落ち込んだことや特別損失を計上した影響が大きかったが、下期の販売回復やコスト低減などにより営業損益は黒字を確保した。18年3月期はASEANや中国、日本の販売強化に加え、日産自動車とのアライアンスによる経営改善を推進。「回復基調を継続し、V字回復を目指す」(益子修社長)方針だ。
不正問題が響く
17年3月期の売上高は前期比15.9%減の1兆9066億円だった。世界販売台数は11.6%減の92万6000台。日本は燃費データ不正問題により21.6%減。北米や中国はスポーツタイプ多目的車(SUV)「アウトランダー」が好調だったものの、ASEANは前期に販売を伸ばした新型「パジェロスポーツ」が減少した。
営業利益は96.3%減の51億円と黒字を確保。販売台数減少など、燃費データ不正問題が360億円の減益要因となった。円高も響いた。一方、日産とのシナジーによるコスト低減効果も30億円強あったという。
新型SUVも投入
18年3月期の業績予想は、売上高が前期比4.9%増の2兆円、営業利益は13.7倍の700億円、純損益は680億円の黒字の見通し。純利益は16年3月期と近い水準に回復を見込む。販売面では、ASEAN、北アジア、日本を重点地域として販売台数を伸ばす計画だ。
ASEANでは、4月に稼働したインドネシアの新工場を活用。生産を開始したパジェロスポーツに加え、小型多目的車(MPV)の生産も9月に始める。フィリピンの工場でも生産車種を拡充する。中国では、現地生産を始めたアウトランダーを中心に、「20年代初めに30万台以上の販売を目指す」(益子社長)ための取り組みを進める。日本は新型SUV「エクリプスクロス」の投入などにより、さらなる販売回復を目指す。
利益については、日産の手法を取り入れながら回復を目指す。コスト低減など、日産とのアライアンスによる今期のシナジーは250億円を見込む。当面は共同購買、物流、販売金融といった分野から協業を検討していく。すでにタイでは車両共同輸送を開始。インドネシアで生産するMPVの供給や、プラグインハイブリッド車(PHV)技術を共有する取り組みも実施する。
20年3月期に世界販売台数125万台、営業利益率6%以上を目指す。益子社長は「将来目指す姿は、得意としている技術を伸ばすこと。世界的に伸びているSUVセグメントは得意分野。それを生かした車づくりをやっていく」と強調。また、技術を持つPHVについては「厳しくなる環境規制にいかに対応していくか、(PHVの技術を)SUVにどのように生かしていくか、追求したい」と語った。
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