近年増えている“6月病”とは?:精神科医に聞く(3/4 ページ)
5月は環境の変化や連休による反動で、体調不調を起こしやすい時期である。「いやいや、私の職場は大丈夫」と思っているかもしれないが安心してはいけない。実はいま、5月ではなく6月に突然メンタル不全で倒れてしまう「6月病」が増えているのをご存じだろうか。
自分のストレス状態を知る方法
――6月病は増えているのですか?
勝院長: 精神障害の患者数に関する厚生労働省の統計では、月次ベースのデータがありませんので、増えてきたことを数字で実証することはできません。しかし、当院では6月病の患者さんが増えてきています。
会社を辞めずらくなったことが理由の1つとして考えられます。ここ2〜3年は売り手市場ですが、それまでは景気が悪かったので就職や転職が大変でした。「いまの会社にしがみつかなきゃいけない」「我慢しなきゃいけない」と思っている人が多かったのでないでしょうか。
もう1つの理由は、「所属感」「仲間意識」といった感覚が職場で得られにくい時代になったことです。昔は終身雇用制度によって企業への忠誠心も高く、「同じ釜の飯を食う」いわゆるファミリー企業が多かったわけです。こうした「所属感」「仲間意識」は精神的な健康を維持する上で重要な要素になります。社会が過度な成果主義に変わったことで職場の人間関係も淡白(たんぱく)になり、ストレスを溜めやすくなっていることも原因だと思っています。
こうした状況に対して企業(人事)は、チームのメンバーと「仲間意識」を感じてもらえるように、仕組み作りをしてサポートしていかなくてはいけません。有効な方法としては「一緒に何かをする」機会をつくること。サークル活動だったり、運動会、昼食会、飲み会なども効果的ですね。重要なのは仕事とは関係のないコミュニケーションを取る機会を増やすことです。
――自分のストレス状態を知る方法はありますか?
勝院長: 「新しいタスクが追加されたとき」「新しいことを始めなければならなくなったとき」にイライラしてしまう場合は、既に高ストレス状態にあります。
普通の状態であれば、前向きに捉えられることでも、余裕がなくなっているために「オレに仕事を振るな!」「それはあいつの仕事だ!」と、イライラしてしまうわけです。
このほか、「ミスや抜けがないか神経質に確認するようになる」「仕事のことが心配で早朝や休日に仕事をしたり、遅くまで会社に残るようになる」人は黄色信号です。また、高ストレス状態のときは、周囲の発言や行動が肯定的に捉えられなくなり、自分を責めている、見下している、嫌っているように思えてしまうのです。
もし、心当たりがある人はしっかり気分転換をしてください。前述したように、ストレス状態が続くと、心の糸が切れてしまいますから。昔から言われていることではありますが、深呼吸や運動、昼食後の仮眠、音楽鑑賞などにはストレスを軽減させる効果がありますので、実践してください。
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