近年増えている“6月病”とは?:精神科医に聞く(4/4 ページ)
5月は環境の変化や連休による反動で、体調不調を起こしやすい時期である。「いやいや、私の職場は大丈夫」と思っているかもしれないが安心してはいけない。実はいま、5月ではなく6月に突然メンタル不全で倒れてしまう「6月病」が増えているのをご存じだろうか。
リーダーの心が折れないためには
――チームをまとめるリーダー層は比較的ストレスを溜めやすい環境にあると言われていますが、どのように対処すればいいのでしょうか。
勝院長: 中間管理職(リーダー層)は部下と上司の板挟みになるので大変です。また多くの管理職は、相談できる同期や先輩がいた新人だった頃と比べて、社内に相談できる相手も少なくなります。相談相手やサポートしてくれる人が周りに少ないと、メンタル不全を起こしやすくなります。
そうした、管理職の人は「捉え方を変える」ことが重要な対処法になります。ネガティブな性格(捉え方)の人はメンタル不全に陥りやすい傾向があるので、そうした人は考え方のクセを変えていき、ストレス耐性を高めていく必要があります。
当病院でも、即時性の高い対策として「捉え方を変える」ことを推奨しています。例えば、不本意な異動があったとき。そのことでストレスを受けないためには「その異動先で想定していなかったメリットも得られるかもしれない」と発想を転換する必要があります。
近年は捉え方を変えるための研修が数多くありますね。全員が簡単に会得できるというものではありませんが、「捉え方は変えることができる」ということを知っているだけでも、大きな強みになるはずです。
例えば、『嫌われる勇気』などで話題になったアドラー心理学は、まさに「捉え方を変える」ことで不安や劣等感を克服させる学問であり、ストレスを弱める即時的な効果が期待できます。
――それでも捉え方を変えられずに悩んでいる人はどうすればいいのでしょうか。
勝院長: 捉え方をなかなか変えられない人は「気分転換」をしっかりすることを意識してください。生活の柱が「仕事一本」になってはいけません。そうした人は仕事がうまくいかなくなったとき、「自分の人生はダメだ」と心が折れてしまうかもしれませんので。
趣味だったり、家庭だったり、生活の中に仕事以外の柱(仕事を忘れられる時間)をできるだけ多く作ってくだい。もし1つの柱が傷ついて倒れてしまったとしても、他の柱が自分を支えてくれます。体を休める時間よりも、仕事以外の何かに没頭する時間をしっかり確保することが、メンタル面では重要になります。
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