カウンセラーが教えるアドラー流“捉え方術”:6月病特集(4/4 ページ)
管理職向けにアドラー心理学を応用した教育研修を行うカウンセラーの岩井俊憲さんに、ストレスをかわす“捉え方術”を聞いた。
ビジョンを語れば部下は変わる?
――「部下が思うように動いてくれない」という悩みを抱えているリーダーは、この課題とどう向き合えばいいのでしょうか。
岩井: アドラー心理学には「目的論」という考え方があります。何のためにその仕事をやっているのか、その仕事にはどんな意味・価値があるのか。その目的をきちんと共有することが、モチベーションを高めさせる上で重要だということです。
部下に与えた仕事の目的・意義についてしっかり語ることで、部下の仕事に対する意識は変わってきます。単に、作業を与えただけではモチベーションは上がりませんよね。より良い働き、質の高い働きをしてもらうためには、その仕事の目的・意義をきちんと分かってもらう必要があるのです。
「この商品を売ってこい」ではなく「この商品が普及することで、社会にどんなインパクトを与えることができるのか」「君のどんな成長につながるのか」といった目的・意義の共有もぜずに「なんだこの成績は!」と怒っても部下はついてこないのです。
いま、部下に与えた仕事の意義を語ることができないリーダーが多くなっているような気がします。
「高すぎる目標は勇気を挫く」
――現場の社員に限らず、管理職も毎年のように高いノルマを設定されています。数字を追いかけることに疲れてしまったリーダーにはどんなアドバイスをしていますか?
岩井: アドラー心理学には「高すぎる目標は勇気を挫(くじ)く」という主張があります。しかし多くの組織は、簡単に達成できる目標を設定しません。命令した本人でも達成不可能な目標を課してきます。
このような状況下で大切になるのが、“自分だけの目標”を作り、「組織から課せられた目標」と「自分で作った目標」を分けて考えるということです。組織目標はダメでも、自分にとっての目標が達成できれば、成長の実感を得られますよね。
また、「最終的に達成したい目標(達成目標)」と「当面の目標」をしっかり分けることも大切です。達成目標だけ見ていると、そこに行き着くまでに心をくじいてしまう。ですから、当面の目標を立て、「まずは、それを達成できれば良い」と考えるようにしてください。
さらに言えば、達成目標に届かなくても、「人としてダメ」ということにはなりません。自分の価値が下がるわけでもありません。同じように、目標を達成したからといって自分の価値が上がることもないのです。あくまで数字の話に過ぎないのですから。
しかし「数値目標の達成」と「人としての価値」を一色単にしてしまう人は少なくありません。数字は数字、自分は自分。数字上で人からどう評価されようが「自己評価」を変える必要などないのです。そこをきちんと分けて考えられるかが重要なのです。
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