「愛」を選んだ眞子さまの結婚は性差別主義的なのか:世界を読み解くニュース・サロン(3/3 ページ)
秋篠宮家の長女、眞子さま(25)が一般の男性と結婚されることが判明した。日本の皇室の話題は世界でも注目されており、今回のニュースも世界中で広く報じられている。どのように報じられたかというと……。
皇室典範が「性差別主義的」?
米ニューズウィーク誌は特筆すべきかもしれない。「日本のプリンセス眞子さまは、一般人と結婚するため、また王位継承のルールが性差別主義的であるために皇室に残ることはできない」という長いタイトルの記事をWeb版にアップしている。皇室典範が「性差別主義的」だと断言しているのだが、日本人向けの記事なら物議になってもおかしくない言いっぷりだ。
記事は、「皇族の女性に対する差別に日本が取り組まないために、日本は2016年に国連女子差別撤廃委員会から非難を招いた」と指摘する。
確かに2016年、同委員会は日本についての最終見解に、男系男子の皇族だけに皇位継承権があるのは女性に対する差別だとして、皇室典範を見直すべきとする勧告を含めていたことが判明した。日経新聞によれば、政府は「ジュネーブの日本政府代表部を通じて『国民から支持されている皇室制度について十分な議論がないまま取りあげるのは不適切だ』と同委に反論」した。そして日本政府の抗議によって、最終的に削られたという経緯がある。
当時、ネット上では「国連を脱退せよ」「不敬だ」といった批判が噴出して盛り上がったことは言うまでもないが、逆に男系男子にこだわるのはいかがなものかという声も一方で聞かれた。
米ニューズウィーク誌の同記事では、婚約が明らかになった眞子さまは、国連からも批判の上がった日本の「性差別的」な皇室典範に影響を被った最新のケースであるとしている。冷静に客観視しても、この記事からは女性の権利を訴えたいフェミニスト的なニュアンスが端々に感じられる。確かに、歴史や文化の側面を二の次にして考えると、男性しか王位継承できないのは不公平で今の時代にはそぐわないのかもしれない。だが日本独特の文化や歴史をじっくりと見ていくと、そんな単純な話では済まない。
少なくとも、今回の婚約のニュースを受けて、ここぞとばかりに皇室典範を「性差別的」と指摘して議論にしようとする手法にはやはり違和感がある。
ちなみに、米ニューズウィーク誌の記事にはコメント欄が設けられているが、現在は日本人になった欧米出身らしき読者が、記事を書いた記者に対してこんなコメントを残している。
「あなたは、ローマカトリック教会が性差別主義者的だと思うだろうか。女性の聖職者は1人も存在しない。女性がローマ法王になることはできない」
そしてこうコメントをまとめている。「日本人として言うが、日本は日本人のものだということも指摘しておきたい。私はあなたの国がどう運営されるべきか述べるようなことはしない。あなたにも私の国についてとやかく言ってもらいたくない」
筆者プロフィール:
山田敏弘
ノンフィクション作家・ジャーナリスト。講談社、ロイター通信社、ニューズウィーク日本版に勤務後、米マサチューセッツ工科大学(MIT)でフルブライト研究員を経てフリーに。
国際情勢や社会問題、サイバー安全保障を中心に国内外で取材・執筆を行い、訳書に『黒いワールドカップ』(講談社)など、著書に『ゼロデイ 米中露サイバー戦争が世界を破壊する』(文藝春秋)『モンスター 暗躍する次のアルカイダ』(中央公論新社)、『ハリウッド検視ファイル トーマス野口の遺言』(新潮社)がある。
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