ドイツのスーパーが、かなりの勢いで世界中に広がっている秘密:来週話題になるハナシ(5/5 ページ)
ドイツのスーパー「ALDI(アルディ)」が、ものすごい勢いで成長している。英国や米国などでも店舗数を増やしていて、現在、世界18カ国で1万店以上を展開。日本では聞き慣れないこのスーパー……なぜ世界の人に支持されているのか。
さて、日本はどうか
米国では、主に東海岸を中心に展開中のアルディだが、大規模な店舗の改装や拡大に力を入れている。店内の通路を広くしたり、明るめの照明に変更するなど、イメージアップを図っているのだ。
さらに、健康志向の高まりから、オーガニックやグルテンフリー(小麦などに含まれるタンパク質の一種であるグルテンを含まない食品)、抗生物質を使用しない鶏肉など、売り上げが伸びているプライベートブランド商品の売り場を充実させている。
しかも、興味深いのが店舗のロケーションだ。アルディは、競合であるウォルマートの巨大店舗がある場所の近くに、あえて出店している。ウォルマートを利用する節約志向の買い物客を密かに奪い取ろうという目論見だ。「セコイなあ」と思われるかもしれないが、これも立派な戦略である。
そんなアルディが現在目標としているのが、2018年までに米国で2000店舗を展開することだ。その数は、ウォルマートの店舗数の約42%に値する。ここでも、じわじわとマーケットシェアを狙っている。
またアルディは、アジアにも目を向け始めている。アジア進出の最初の国として選んだのが、中国だ。と言っても、実店舗をオープンさせたのではない。ネット上に店舗を立ち上げたのである。
中国アリババグループが運営するeコマースサイト「TMall Global(天猫国際)」上にストアを開設し、オーストラリアから商品を発送するというユニークな試みを始めている。2017年4月からサービスを開始したばかりだが、ワインやスナック、朝食用のシリアル、粉ミルクなどを取り扱っている。
日本でもかつて、いくつもの海外大手スーパーが参入し、撤退に追い込まれていった。そんな歴史からも、日本には独自のスーパーマーケット文化があり、消費者を取り込むのが難しいマーケットと見られている。
ただ斬新なアイデアをもつアルディなら、日本国内で実店舗の展開を開始しても十分にサバイバルできるかもしれない。今後の展開に注目したい。
著者プロフィール:
藤井薫(ふじい・かおる)
大学を卒業後、広告代理店や出版社を経てライターに。
『POPEYE』『an・an』(マガジンハウス)や『GLAMOROUS(グラマラス)』(講談社)などで、ファッション、ビューティ、ビジネスなど幅広い記事をカバー。日本と海外を頻繁に行き来して、海外トレンドを中心に情報発信している。
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