“デジタル化”を意識しない人は出世できない:有識者に聞く(3/4 ページ)
企業が生き残る上で、「デジタルトランスフォーメーション」の推進が喫緊の課題となっている。こうした背景から近年は、IT部門を経験することがCEOやCOOへ出世するための重要なポイントになってきているという――。
DXが下剋上を起こす
――DXの浸透は既存ビジネスの秩序をどう変えていくのでしょうか。
中村: 先ほども述べたように、これから先はITなしでのビジネスは成立しません。ですから、企業が生き残る上でDXへの意識は非常に重要なのです。安定的な収益を上げている大企業であっても、DXの重要性を理解していない企業は近いうちに新興勢力に抜かされて、市場から撤退することになるでしょう。
DXを進める上では経営者によるリーダーシップが重要になります。しかし、当社が国内のCEOに意識調査を実施ところ、DXを推進している、あるいは重要課題に置いているCEOの割合は半分以下でした。日本は世界と比べてその意識が低いのです。
こうした調査結果から当社では、20年までに各産業でトップ20(売り上げ規模で)にランクインしている企業のうち、3分の1は新興勢力と入れ替わっている可能性が高いと分析しています。
――これまでに以上に経営者のITリテラシーが求められるようになったということですか?
中村: はい。当社では、グローバルでDXの重要性が高まることから、20年までに全世界のCEOとCOO(最高執行責任者)の3分の1は、過去にIT部門の責任者を経験した人材と入れ替わると推測しています。実は既に、企業における出世コースも変わってきています。少し前まではIT部門は決して花型のポジションではありませんでした。しかし、今はIT部門を通過することがCEOやCOOへ出世するための重要なポイントになってきているのです。
もちろんITだけ分かっていても経営はできません。これからは、ITとビジネス、両方分かる人材が求められます。実は、経営コンサルティング(以下、コンサル)業界にもその流れが起きています。これまでは「ビジネスのコンサル」「IT構築のコンサル」と、領域が分けられていましたが、近年はその両方を分かっていないと仕事がもらえないという状況になりつつあります。ですからコンサル業界でもその両方を理解できる人材の確保を急務で進めているようです。
しかし、コンサル業界に限らず「ビジネス」と「IT」の両方を理解した人材がなかなかいないという課題もあります。いかに、そうした人材を獲得するか、これから世界中で取り合いになるでしょう。
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