トヨタアライアンスの現在地:池田直渡「週刊モータージャーナル」(2/5 ページ)
これまで自動車業界の世界一争いは、トヨタ、フォルクスワーゲン、GMによる1000万台の年間生産台数が基準だった。そこにルノー・日産アライアンスが加わったわけだが、さらにトヨタは新たなアライアンス構築によって、唯一1600万台という巨大アライアンスへと踏み出した。
ダイハツの役割
ダイハツは昨年8月にトヨタの完全子会社になった。株式会社であるトヨタが、株式会社であるダイハツの株を100%所有するということである。
ダイハツはトヨタの一部になったのかと言えば、そうではない。そんなことをするメリットがトヨタ側にないからだ。例えば、吸収合併してダイハツという会社を解散してしまえば、旧ダイハツの社員はトヨタの社員になる。となれば、給与から福利厚生まですべてトヨタの水準にそろえる必要がある。規模と収益の大きいトヨタはダイハツより給与や福利厚生のレベルが高いはずで、わざわざ高い側に統一して修正しなくてはならない理由はない。
だからこそトヨタは法人としてダイハツ株を所有しつつ、ダイハツを存続させたのだ。では、トヨタがダイハツを所有する理由は何か。それはリソースの分担である。トヨタは今後リソースの多くを先進国マーケットに集中し、ダイハツは新興国マーケットと国内の軽自動車とコンパクトカーを担う。
国内コンパクトカーに関しては、トヨタとダイハツが重なる部分はあるだろうが、そこはOEM(相手先ブランドによる生産)をうまく使って、1台の開発リソースでより多くの販売機会を得ることも可能である。実際、5月9日に発売されたダイハツの軽自動車、ミラ イースは、トヨタではピクシス エポック、スバルではプレオプラスとして販売されている。グループ内で同じクラスのクルマを互いに作って市場を食い合うよりずっと合理的である。
関連記事
- 反プレミアム ダイハツのリブランディング
ダイハツがトヨタの完全子会社になって以降の世界戦略と、ダイハツ・ブランドの再定義を行った。その中身とは……。 - ミラ イースで始まる新時代のダイハツ
ダイハツは主力のミラ イースをモデルチェンジした。今年3月に発表されたDNGAのコンセプトは、今回のミラ イースにどの程度反映されたのであろうか? - マツダ独自のデザインを見せるための塗装
クルマに塗装をする最大の理由は錆びを防ぐためだ。けれども、塗装は商品のデザイン価値を高める効果もある。そのことについて常識を超えた取り組みを見せているのがマツダだ。 - 軽自動車の歴史とスズキ・ワゴンR
スズキは、軽自動車の中核モデルであるワゴンRのフルモデルチェンジを行った。今回は軽自動車の歴史をひも解きながら、スズキの歩みを振り返ってみたい。 - 日本車はガラケーと同じ末路をたどるのか?
最近、世間ではこんなことがよく言われている。電気自動車の時代が到来することによって中国車が台頭し、日本車はガラケーと同じような末路をたどるというのだ。果たしてそうなのだろうか?
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.