日本車はガラケーと同じ末路をたどるのか?:池田直渡「週刊モータージャーナル」(1/4 ページ)
最近、世間ではこんなことがよく言われている。電気自動車の時代が到来することによって中国車が台頭し、日本車はガラケーと同じような末路をたどるというのだ。果たしてそうなのだろうか?
世間で盛んに言われていることがある。それはこんな三段論法だ。
まもなく電気自動車の時代が来る
↓
技術がコモディティ化して参入障壁が下がる
↓
中国車の時代がやってくる
こういう話をする人は、まず例外なくフィーチャーホン(ガラケー)の覇権時代から転落した日本の家電メーカーの携帯電話やスマートフォンの話を念頭に置いて、あるいは直結的になぞらえて話をしている。
基本的な概念としては日本の高度経済成長時代を支えた垂直統合型ビジネスモデルが終わり、水平分業型に移行していくという考え方だ。それ自体が間違っているわけではない。
PM2.5問題で厳しい環境規制が敷かれた中国では、現在電気自動車ビジネスが急伸中である。NextEVの新ブランドNIOは、昨年EVスーパーカーを発売した。このEP9はニュルブルクリンクのレコードを更新し、6分45秒9を叩き出した
寄り道的に解説を差し挟もう。垂直統合とは、別の言い方をすれば自前主義である。商品企画から設計、生産、販売まで、自社または支配下にある系列企業に集中することで、トップダウン型の製品作りを行う方法だ。
対する水平分業型は、市場から用途や目的に適合する部品を集めてきてアッセンブルを行う。多少大げさに言えば、商品企画のみが命で、生産は半製品部品を調達して組み立てるだけだし、販売も卸売りをしておしまいだ。基本的には自由経済の原則に則り、アッセンブルメーカーがいちいち方針や目標を指図しなくても、自由競争の中で汎用部品の性能と価格が磨かれ、それを適正に調達することで製品は良くなる。
ビジネスモデルへの誤解
本論に戻ると、この三段論法は、おかしなところがいろいろとある。
第1に全盛期の状態が自動車メーカーと家電メーカーでは違う。フィーチャーホンは日本市場でこそ圧倒的なシェアを誇ったが、世界市場に討って出られたのかと言えばそうではない。それには明白な理由がある。家電メーカーはdocomoやau、Softbankなど日本のキャリアと共同で商品開発を行い、それをキャリアが一括買い上げするビジネスモデルだったからだ。
だから海外製品に比べて性能面でいくら優れていようが、海外に進出することはできなかった。もちろん通信方式も国ごとに異なるので、そこにも障壁はある。しかし、それ以上に自分で商品企画を完全に掌握しておらず、共同企画なので、国外に商品を出すわけにはいかない。そういうキャリア依存のビジネスモデルばかりのところへ、アップルがキャリアから独立した自社企画による自社製品を製造して流通させた。これは本来キャリアと完全に分断されたビジネスモデルだったのが、後にキャリアであるSoftbankが、iPoneの販売権を取得したから話はさらにややこしくなった。
冷静に考えれば、キャリアにとっては製品企画に参加して一括買い取リスクを冒す必要はない。利益構造は多少変わるかもしれないが、外部企業が勝手に製品を作り、その販売に関与することで利益の分け前が得られるのであれば、それはそれでビジネスとして成立する。家電メーカーのフィーチャーホンが急落したのは、自力で開発して自力で売るというビジネスへの変化を目前に見ながら、キャリアとの関係を清算できなかったところにある。
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