「経営陣に女性がいる企業は業績がよくなる」という法則:米テキサス大学が研究結果を発表(2/2 ページ)
経営先進国と考えられている米国でも実は、女性の昇進を阻む「ガラスの天井」が相変わらず分厚い実態がある。そうした中、経営陣に女性が含まれる企業はパフォーマンスがよくなるという実証研究が相次いで発表された。この意味を考えてみたい。
多様性の重要さを理解できる経営者が求められている
その過程で、財務的数値に偏った視点だけでなく職場での働きやすさといった人的要素に注目をしやすいなど、女性特有の視点が加えられるのが功を奏す、というのがDavid Harrison教授たちの見立てらしい。
「女性がもたらす多様性が企業を強くする」という見方は特に新しいわけではなく、ここ20年ほど、世界中のマネジメント研究分野で直観的には語られてきた。特に、女性の役員比率の高い著名な北欧企業が長期間にわたって安定的成長とグローバルな躍進を両立させていることで、そうした考えが注目を浴びるようになっていた。冒頭の2つの研究グループはさらに、膨大な事例と数値を基にそれを実証したことが特筆すべき貢献といえる。
多くの人が気付くように、こうした多様性は女性のみがもたらすベネフィットではない。昨今注目されているLGBT(性的少数者)や、外国人など人種・文化の異なる人たちも同じ役割を果たし得る。彼らマイノリティがいることで、マネジメントレベルでも非常に有用なインサイト(洞察)を、そして幅広い層でイノベーションへの刺激をもたらすことが度々指摘されている。
社外取締役の導入が先進諸国で活発になった理由もよく似ている。つまり、その会社のカルチャーにずっと染まってしまった純粋培養の役員ばかりでは、仮に経営トップの判断や価値観が世の中とズレてしまっていても、疑問すら湧かずにそれを指摘できない。仮にコンプライアンス的に問題のある行為(偽装など)が上位の人たちの間で行われていることに気付いても、つい目をつむってしまう。
こうした硬直的な思考が横行していては「取り締まり」ができず、会社が間違った方向に進むことを防止できない。このリスクに対する懸念が社外取締役の導入を推進しているのだろう(個人的には、形式主義的で実効性に難のあるケースも多いのではと疑問視しているが)。
そしてわれわれ外部コンサルタントにもまた、社内だけでは不足するものを補う「専門家としての知見と経験」だけでなく、「第三者の視点」による気付きやチェック機能というのも大いに期待されているだろう。
保守的傾向の強い日本企業でもこうした多様性の重要さを理解できる経営者が増えると、硬直的思考のリスクを抑えながらイノベーションを促し、VUCA(変動/不確実/複雑/曖昧)と呼ばれる予測困難な時代を乗り越えることができるのではないかと思う。(日沖博道)
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