サイバー女性役員が部下に失敗させるワケ:スピード成長には理由がある(1/3 ページ)
「新人時代から営業目標を毎月のように200〜300%達成」「わずか2カ月で産休から復帰」……。サイバーエージェントで数々の偉業を成し遂げてきた執行役員の石田裕子さんは、自らがスピード成長できたのは「失敗」があったからだという。
「とにかく失敗だらけ。社内で負債額ランキングみたいなものがあれば、上位に食い込むレベルですよ」
笑いながらこう話すのはサイバーエージェント 執行役員の石田裕子さん。彼女はこれまでどのようなキャリアを築いてきたのだろうか。
2004年にサイバーエージェントに新卒入社した石田さんは、インターネット広告営業の部署に配属。当時のサイバーエージェントはまだ新規顧客を開拓することが多く、飛び込み営業もざらだった。そうした中で、石田さんは1日に5〜6件もアポイントを取っては、とにかく顧客にネット広告を提案した。目標に対しても貪欲で、決して100%達成では満足せず、常にもっと高い成果を求めた。その結果、1年目からセールス目標に対して200%、300%という高い達成率を毎月のように叩き出したのである。
すぐさまリーダー職、マネジャー職とスピード出世を果たし、2008年には部署で初の女性局長となった。その後、結婚、出産するも、わずか2カ月で産休から復帰。2012年に同社の主力サービス「Ameba」のスマートフォン事業を立ち上げるためプロデューサーに職種転換。2013年にはスマホ向けオークションサービス「パシャオク」を運営する子会社の社長に、2014年からは女性向けクラウドソーシング事業の子会社社長を務めた。そして2016年10月、古巣であるインターネット広告事業本部の人事本部長に就任し、二児の母として現在もバリバリ働いている。
この歩んできた道のどこに失敗があるのだろうか。「任せられた子会社のサービスは結果的にどちらも終了してしまいましたし、ほかにも言えないほどたくさん失敗しました」と石田さんは話す。ただし、彼女のすごいところは、失敗してもつぶれることなく、そのたびに「この経験を次にどう生かせるのか」「どうやってリカバリーしようか」「チャンスを与えてくれた会社にどう恩返しできるか」と、常に前向きな視点で考えていることだ。
社会人2年目の大失敗
そんな石田さんにとって最大の失敗とは何だったのだろうか。
それは社会人2年目のこと。結果を出せる営業として社内外から認めてもえるようになり、ようやく一人前になったかなと思った矢先のことだった。新規営業で獲得した顧客との信頼関係が徐々に強まり、かなり大きな金額の案件を任せられたのだが、その契約を書類ではなく口頭で交わしてしまったのだ。顧客から注文を受けた金額分の広告を配信したところ、「そんなことは頼んでない」とクレームが来た。ところが口約束だったため、その額を証明するすべがなく、サイバーエージェントで補てんすることになったのである。
「その一件は、とうに私の手を離れて会社対会社の話になるほど大きな問題になってしまいました。当然のように担当を外れろと言われたのですが、『いやです、やりたいです』と突っぱねました。図太い性格なんですよね(笑)。お客さんにも会社にも多大な迷惑をかけてしまったのですが、再びチャンスをもらうことができました。そこで挽回し、最終的にはもっと大きな額の取引ができるまでになりました」
この失敗の経験は大きな収穫となった。例えば、それまでは自分の目標数字を達成することばかりに執着していたが、本来、営業職というのは顧客にとって最適な課題解決を提供することなのだと気付かされた。「自分のことしか見ておらず、何て目線が低いのかと反省しました。その後、入社3〜4年目からはかなり違う営業スタイルになったと思います。早く自分の欠点に気付いてスタイルをチェンジできたのは大きかったです」と石田さんは振り返る。
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